ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

2016-07-18 23:53:27 | た行

地味かもしれない。
でも、とても大事な映画です。


「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」71点★★★★


********************************



1947年。ハリウッドの売れっ子脚本家
ダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)は
妻や子どもたちと、幸せな日々を送っていた。

しかし、ソ連との冷戦下にあったアメリカは
国内の「共産主義者」を見つけ出し、排除しようという
“赤狩り”を行い、

その矛先はハリウッドにも向いていく。

スタッフの賃上げ要求に賛同し、
一緒にデモを行っていたトランボは
“共産主義者”のレッテルを貼られ、

仕事を失う危機に直面してしまう――。


********************************


あの名作「ローマの休日」は
最初、別の脚本家の名前で世に出ていたんですね。

本当にあの話を書いたのは
この映画の主人公、ダルトン・トランボ氏。

なぜ、あの名作を偽名で出したのか?
なぜ、そんなことになったのか?
そんな氏の人生に迫る、実話の映画化です。


ときは1947年。
アメリカは「ソ連憎し!」のムードを作るため
国内の「コミュニスト=共産主義者」を弾圧する“赤狩り”を行っていた。

当時、すでに脚本家として成功していたトランボ氏ですが

彼は
周囲の「金!」「欲!」な雰囲気に染まらず、
富裕層の搾取を許さず、富の分配を訴えるような
人格者だったんです。

で、
スタッフの待遇や、賃上げを要求し
彼らと一緒にデモをしたりする。

いまなら「おお~!素晴らしい」な話ですが、
しかし、それによって彼は
「共産主義者」とされ、裁判にかけられてしまう。

トランボが娘に
「お父さんは共産主義者なの?」と聞かれ、
話してやる説明が、とってもわかりやすかったので引用してみますと

(トランボ)「もしおまえの学校に、お昼のサンドイッチがない子がいたら、どうする?
(娘)「・・・?」
(トランボ)「『働いて買え!』という? あるいは利子をつけて金を貸すか?それとも、自分の分を半分にしてやる?
(娘)「・・・半分こする」
(トランボ)「(ニヤリ)じゃあ、お前もコミュニストだな」――(笑)


・・・ね?今聞くと、
より、いろいろ考えさせられる内容じゃないですか?


でも、結局それで仕事を失った彼は
「ローマの休日」も自分の名前で出せなくなったんです。

仕事もなくなり、
どんどん苦しくなっていくんですが
しかし!
トランボ氏は、屈しない、あきめない、へこたれない。
安い値段でも、名を隠しても、書き続けるんです。

ワシ、そこに、ものすっごく感動しました。

例えば、
リストラされても、会社が倒産しても
雑誌が廃刊になっても(いや、リアルすぎるでしょ。笑
フテくされてる場合じゃない。

過去の地位やプライドにしがみつくわけでなく、
「自分には、書くことしかない!」と前に進む。

そんなトランボ氏、カッコイイんですよ。



アメリカ人の“共産主義”アレルギーの
根深さも改めて感じたり


勉強にもなったし、
ホント、勇気もらえる映画でした。


★7/22(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。

「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする