ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

めぐりあう日

2016-07-27 23:41:07 | ま行

「冬の小鳥」から6年。
ウニー・ルコント監督の新作です。


「めぐりあう日」76点★★★★


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パリに暮らす理学療法士のエリザ(セリーヌ・サレット)は
30年前に自分を生んだ母親を探している。

しかし、フランスの「匿名出産」という制度に阻まれ、
なかなか実母にたどり着くことができない。

エリザはついに8歳の息子(エリエス・アギス)を連れて、
実母が住むだろうと思われる街に
引っ越してくる。

その街で働き出したエリザは
ひとりの中年女性を治療することになるのだが――?


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韓国からフランスに養子となって渡った
過去を持つウニー・ルコント監督。

前作「冬の小鳥」(いい映画!)で
自身の体験をモデルに
父親に捨てられた9歳の少女の心を繊細に描いて
世界に衝撃を与えたわけですが

今回は、養子として育った30歳の女性が
実母を探す・・・という物語。

いやあ、この人は本当に
自分のルーツにとらわれているんだなあ・・・
まずはその思いの強さを、ずしんと受け止めずにはいられなかった。

しかし前作同様、本作も
単なる「自分の昔語り」なんかには収まらない。


冷静と叙情を両立させながら、
やさしく美しい映像で、
登場人物の心を、観客にリンクさせてくれるんです。


名乗り出ない実母を探す主人公エリザは、8歳の息子を連れて、
実母が住むと思われる街に引っ越してくる。

そこで、エリザと実母はお互いに知らぬまま
すれ違い、やがて出会っていく。

観客はそんな運命のいたずらを
ハラハラしながら見守ることになるんですね。

このめぐり合わせの綾が、まあ絶妙で
ぐいぐい引き込まれます。

物語の大きな鍵となる
息子ノエの存在もいい。


しかし見終わってやはり
そこまで主人公を、いや監督を、
こだわらせる「実の親」とは何なのだろう――
考えずにはいられないのですが

幸運にも
ルコント監督にインタビューをすることができ、
そこのところ、じっくり伺うことができたので
ぜひ、映画と併せて読んでみてくださいませ。

カタログハウスさんの
『通販生活』ウェブサイトの「今週の読み物」です。


★7/30(土)から岩波ホールほか全国順次公開。

「めぐりあう日」公式サイト
コメント
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