椎名誠さんや渡辺一枝さんの本で読んでいた
チベット人の暮らしが、たっぷりと。



「ラサへの歩き方~祈りの2400km」70点★★★☆




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チベットの村に暮らすニマは、

叔父の願いである
聖地ラサへの巡礼を決意する。



すると、隣家の身重の妻やその夫、その妹も
加わることになり、


さらに
家畜の解体をしているワンドゥも
「たくさんの命を殺めてきた罪滅ぼしをしたい」


参加することになった。

総勢11人が、ラサまでの道のりを
体を大地に投げ出す“五体投地”という過酷な方法で

ゆっくり、ゆっくり進んでいく――。



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「胡同のひまわり」のチャン・ヤン監督作品。

ドキュメンタリーなのかなあと思って見ていたら、
フィクションでした。
でも
出演者たちは本物で、その暮らしぶりは本物なので
おもしろい。


中国映画なんだ、と意外に思ったけど
まったく政治の話とか出てこないし、
映画はとてもシンプルに、彼らの旅の日々を映し出します。



“五体投地”は全身を地面に投げ伏せて祈る方法で
かなり過酷ですが

黙々と一行は進み、
途中でテントを組み、火を囲んで食事をし、
繕い物などをしておしゃべりをし、お祈りをして寝る。
そして、朝になるとまた五体投地。



そんな日々のなかに
彼らの高い精神性を見る思いがしてきます。


途中で、旅に欠かせないトラクターが
別の車に壊される事故が起こるんですが

ニマたちは相手の事情を聞いて「いいから、行きなさい」と言う。


彼らは荷車を
自分たちで押して動かさなくてはならなくなり、





しばらく押していくと、最初の地点に戻って、
五体投地をやり直すんです。

でも文句も言わないし、
ズルなど、あり得ない。

この清らかさ、誠実さ。


この大変な道のりは
自分のためじゃなく、みんなのことを願ってこそ。
その次に自分、という心の美しさ。

そのことが結局、自分を浄化する。
そんな道のりなんだなあと思いました。


ちなみに、五体投地では
1日10km進むのが普通だそう。



というと、ラサまで1200kmに半年ほど、

さらに目指すカイラス山までだと、やはり1年がかりですね。
・・・。

★7/23(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。
「ラサへの歩き方~祈りの2400km」公式サイト