バラナシ、行ってみたかったな。
(いや、きっとまたいつか、行くときがくるでしょう!)
「ガンジスに還る」71点★★★★
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現代のインド。
中年男性ラジーヴ(アディル・フセイン)は仕事一筋、
常に携帯を手放なさず、忙しい日々を送っている。
そんなある朝、
父ダヤ(ラリット・ベヘル)が突然、言い出す。
「わしは死期の訪れを感じている。明後日、バラナシに行く」
――バラナシとは、ヒンドゥー教徒の聖地。
聖なるガンジス川を前にしたこの地で死ねば
「解脱」が得られるとされ、川べりでは日々、火葬が行われているのだ。
しぶしぶラジーヴは父に付き合い、
死を待つ人々のための「解脱の家」にやってくるが――?!
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インドの聖地「バラナシ」を舞台に、
1991年生まれの若手インド人監督が撮った作品。
歌ったり踊ったりのボリウッド風はなく、
落ち着いたトーンの色合いがやさしく、
映像も美しく
ふわっと笑うユーモアが散りばめられていて
もうちょっと笑いがあってもいいかなーと思ったけど、
ほどよいウェルメイド映画です。
まず
死期を待つ人の「解脱の家」って知らなかったし
おもしろい着眼点だと思った。
自分の死と向き合い、それを待つ、という行為はすごく理解できるし。
さて、どんなところ?と思うと
これが、またおもしろいんですよ。
医療設備はなく、食事もすべて自己責任。
そして滞在は15日まで――ってルールがある。
もちろん、そんなに都合良く人は逝けるわけじゃないので(笑)
父と、付き添いの息子は
そこに暮らすさまざまな人に出会うわけです。
ちょっと浮き世離れした、その空間で暮らすうちに
いつも携帯を話さず慌ただしい息子は
父に抱いていた心のおりをだんだんに濾過し、浄化していく。
ギクシャクしていた息子と父の関係も、少しずつほぐれていく。
解脱したのは息子のほうだった、のかもしれない。
そういや
解れる(ほぐれる)の解も、解脱の「解」だなあと。
そして、「解脱」とはなにか、を諭す施設長の説明が非常にうまかった。
己の魂とは「波」のようなもの。
広い視点でふと見渡すと、それが「海」の一部だったと気づく。
それが「解脱」というものです――だって。
うん、なんか、一瞬、見えた気がしませんか。
★10/27(土)から岩波ホールほか全国順次公開。