ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ニューイヤーズ・イブ

2011-12-21 22:22:13 | な行

タイムリーさには80点あげたい!

「ニューイヤーズ・イブ」57点★★★

「プリティ・ウーマン」「バレンタインデー」の
ゲイリー・マーシャル監督が、
ありとあらゆるゲストを総動員したオムニバス・ラブ映画です。


大晦日のニューヨーク。

タイムズスクエアで年越しのカウントダウンを段取る
副会長(ヒラリー・スワンク)は
朝から大わらわ。

その年越しイベントに出演する
ロックスター(ジョン・ボン・ジョヴィ)は、
1年待たせた恋人(キャサリン・ハイグル)に再会する。


友人とカウントダウンを過ごしたい
ティーンエイジャー(アビゲイル・ブレスリン)は
母親(サラ・ジェシカ・パーカー)に外出を禁じられて、むくれる。


小さな奇跡を願うそれぞれの思いをのせて
新しい年へのカウントダウンが始まった――。



18人、8組のエピソードで綴られる
年越しストーリー。

「バレンタインデー」も多かったけど
さらに多い(笑)

上記のほかにも

ハル・ベリー、ジェシカ・ビール、
ロバート・デ・ニーロ、ザック・エフロンに
アシュトン・カッチャー、ミシェル・ファイファーetc……と

まあこれでもか!な豪華キャストがてんこ盛り!

見応えはあるんですが、

なにせ8組もの話なので
各エピソードが小粒にすぎる。

せっかくのキャストもちょっともったいないですね。

恋人たちのエピソードが少ないのも
華やかさや楽しさに欠けるし。


エンドロールのNG集みたいな遊びが
一番おもしろかったかもしれません(笑)。


それでもテレビでしか見たことのない
ニューヨークのあの“盛り上がる”風景に
参加した感は楽しめます。

タイムリーな公開タイミングも
映画鑑賞には非常に重要だしね。

クリスマスデートにどうぞ。

★12/23(金)から丸の内ピカデリーほか全国で公開。

「ニューイヤーズ・イブ」公式サイト

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永遠の僕たち

2011-12-20 21:36:14 | あ行

切なすぎて震えた!ボロ泣いた!

「永遠の僕たち」79点★★★★

ガス・ヴァン・サント監督の新作です。


交通事故で両親を失った少年イーノック(ヘンリー・ホッパー)は
生きる意欲を失い、

他人の葬式に参列するのを趣味として、
惰性で人生を生きている。(「ハロルドとモード」みたい!(笑))


話相手は、ヒロシ(加瀬亮)だけ。
そしてなぜかヒロシは他人には見えないのだ。

ある日、イーノックは葬儀会場で
少女アナベル(ミア・ワシコウスカ)に出会う。

彼女もまた他人の葬式を覗くのを趣味としていたが、
彼女には別の理由があった――。


いや~またしてもやられました。

ガス・ヴァン・サントという人は
どうしてこうも
人の心をもぎ取るのだろう!!


いわゆる難病ものの素材なんだけど、
手垢がついた感じまったくない。

繊細なタッチ、優しい音楽、そして
清らかさ、瑞々しさがあって

普段なら苦手なファンタジー境界も
この人にかかると、全然オッケーになっちゃうんだよなあ。


この少年と少女を見ていると
出会わなかったほうがよかった、なんてまったく思わない。

はかないからこそ美しい「生」を
彼らともに味わい、
「また朝がくる」喜びをかみしめる。

そして
人生は人と出会い、愛する喜びに満ちているんだと
素直に感じられるんです。

そして誰の物語も「いつかすべては終わる」んですよ。
くうう、切ないねえ!

それに
加瀬亮の英語が柔らかくてうまいんです。
彼の小さなセリフに泣かされました(涙)

★12/23(金)からTOHOシネマズ シャンテ、シネマライズほか全国順次公開。

「永遠の僕たち」公式サイト
コメント (2)
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ミラノ、愛に生きる

2011-12-19 20:21:33 | ま行

美しさと、こみ上げるエモーションに
圧倒されました。

「ミラノ、愛に生きる」80点★★★★


ミラノに暮らすエンマ(ティルダ・スウィントン)は、
裕福な一族の妻として、
何不自由ない生活を送っている。

3人の子どもたちも
だんだんと巣立ち始めたある日、

エンマはふとしたことから
娘(アルバ・ロルヴァケル)の秘密を知り、心ざわめかせる。

そんな折、エンマは息子の友人で
庶民階級のシェフ・アントニオ(エドアルド・ガブリエリーニ)に出会う。

エンマはいつしか、
アントニオの姿を目で追っている自分に気づくのだが・・・。


いや~、これはすごいですマジで。

冒頭から
往年シネマのクラシカルな雰囲気で始まり、
気分が盛り上がる!


そして“優雅”というにはあまりにもスゴい
上流階級の耽美な暮らしぶりに圧倒されます。
家具も調度品も、目の保養すぎる。

そんななか、
生きる世界も、年も違いすぎる
息子の友人に出会ってしまう上流マダム。

その愛の解放を、
極上の映像と感性で色づけし、

単なるオバさんのドリーミーなメロドラマでなく、
至高の体験に昇華したセンスが素晴らしいんですよ。

おそらく男女問わず、受け入れられると思います。


大抵こういう話って
裕福だけれど満たされない金持ちが愛に出会う、って
描き方が多いけど、

この映画は違うんですねえ。


裕福でこそ成り立つ「豊かさ」と、
滋味に溢れた暮らしの持つ「豊かさ」、

質の異なる「豊かさ」を
どちらが上、とかでなく、
甲乙つけがたい美しさで描いたのが出色です。


それに51歳のティルダ・スウィントンが
ホント奇跡の美しさですよ。

その美しさは
「45歳なのに20代にしか見えない!」とかいう
どこかの国の間抜けなものではなく、

きちんと「その年齢」の美しさなんだよなあ。
でもお金は完璧にかかってる(笑)。
役柄が役柄でもあるしね。


あと、すごいのが
娘役のアルバ・ロルヴァケルが彼女にそっくりなこと!

「ボローニャの夕暮れ」に出ているイタリア女優ですが、
常々、似てるなあと思ってたんですよね。

ティルダ自身もそう感じていたそうで、
「いつか娘役にキャスティングしたい」と
思ってたんだって。

素敵!(笑)

くそ忙しい年の暮れ、
スーッと優雅な気持ちになれるはず。
オススメです。

★12/23(金)からBunkamura ル・シネマで公開。ほか全国順次公開。

「ミラノ、愛に生きる」公式サイト
コメント (3)
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宇宙人ポール

2011-12-18 23:24:30 | あ行

とにかく予想以上に
“普通に”楽しめる映画でした。

「宇宙人ポール」70点★★★☆


イギリス人のオタクコンビ
クライヴ(ニック・フロスト)とグレアム(サイモン・ペッグ)は
アメリカに「UFOの聖地詣で」にやってくる。

「ここがスタートレックのロケ地かあ!」
「ここらへんが、エリア51かあ!」
とかなんとか、はしゃいでるうちに、
なんと2人は
本物の宇宙人に遭遇する!

しかしポールと名乗るこのエイリアン、
長年地球に暮らしてるそうで、

妙にノリのいい“アメリカン”なヤツだった(笑)

なーんか釈然としないまま、
二人はポールを
故郷の星に帰す手助けをすることになるが――?!


この映画はまず、なにより
“フツーにおもしろい!”が一番のキャッチですね。


アメリカンなコメディ映画、
しかも男子コンビ系オタク派、につきものの、
お下劣な暴走とか、内輪ウケ的なものがなく

映画のパロディーやオタクネタもあるけど、
割りにまろやかで、万人に楽しめる。

「イギリス人」を主人公にした
よさかもしれません。


妙に世慣れた宇宙人ポールが
とにかくナイスキャラで

彼のトークと、
「宇宙人」に感じる我々の固定観念が生み出すギャップに笑うという
かなり正当なコメディでした。

元ネタとして出てくる映画もそんなにマニアックじゃなく
「未知との遭遇」「E.T.」レベルなのも助かる。
「未知との遭遇」が
映画とのほぼファーストコンタクトだった番長にとっても
すごくうれしいネタが満載でした。

結局、マニアにも初心者にも
「いいものはいい」なわけで

ちゃんとしたレベルに達してる作品は
誰にも共有できるものなんだ、ってのがいいですね。


「ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル」にも出演している
サイモン・ペッグにも注目。

あの超!豪華映画で、映画自体の株を上げているのが、
彼のユーモアだってのも、実感できると思います。
笑い、万歳!


★12/23(金)から全国公開。(12/17から渋谷シネクイントほか先行公開)

「宇宙人ポール」公式サイト
コメント (5)
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CUT

2011-12-17 23:56:19 | か行

監督ですが、
主演の西島秀俊氏も
相当なシネフィルなんだそうですね。

「CUT」28点★☆

イラン出身アミール・ナデリ監督が
日本で撮った作品。


映画監督で熱心な映画ファンである秀二(西島秀俊)は
ある日、兄が借金トラブルで死んだと聞かされる。

兄の残した莫大な借金を返すため、
彼はヤクザを相手に
自分を殴らせてお金を稼ぐ“殴られ屋”をすることになるが――?!


バイオレンスシーンは多いけど、
思ったより痛くなかったのは
いいのか、悪いのか。


「いまの映画は娯楽ばかりで死んでいる。
昔、映画が芸術だったころを取り戻そう!」と叫ぶ主人公は、

殴られても殴られても、倒れない。

そんな主人公の姿に、
映画への信念を託してるのでしょう。

で、殴られている間に
名画のシーンが挟まる、という具合。


情熱や思いは伝わるんですが、
「映画愛」と「殴られ」の間にあるものが
あまり丁寧に埋められていないので、
やはり観ていて違和感がある。


思い入れと思いつきだけで、2時間、突っ走った感が否めない。


そもそも「殴らせて、お金を稼ぐ」って、
一度くらいはおもしろがられても、
何度もみんなが夢中になるもんか?(苦笑)


映画内の名画映像に使用許諾が降りなかったものがあって、
134分が120分に急きょカットされたそうですが、
この映画を象徴している話な気がする。

情熱は買うけど
監督、ちょっと勇み足だったんですかね。

同じシネフィルなら
マチュー・アマルリックのほうが
その昇華がうまいかな、と。


★12/17(土)からシネマート新宿、シネマート心斎橋で公開。ほか全国順次公開。

「CUT」公式サイト
コメント (2)
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