ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ダークナイト ライジング

2012-07-23 20:36:14 | た行

米での痛ましい事件が、残念でしかたないです。
作品が素晴らしいだけに、余計に・・・

「ダークナイト ライジング」78点★★★★

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舞台は
前作「ダークナイト」(08年)から8年後の世界。

殺人者のレッテルを貼られた
ダークナイト=バットマンこと
ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)は
表舞台から姿を消し、

ゴッサムシティには平和が訪れていた。

が、それはさらなる惨劇の
予兆でしかなかった――。


いち早く街の変化に気付いたのは
市警本部長のゴードン(ゲイリー・オールドマン)と
情熱ある警官ジョン・ブレイク(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)。

そしてキャットウーマンこと
セリーナ(アン・ハサウェイ)だった。

そんななか、ついに
最強の敵ベイン(トム・ハーディ)が姿を現す。

8年前の戦いで自らも傷つき、
隠居生活を送っていたブルースは
再びバットマンスーツを着ることになるのか――?!

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しびれたア!よかった!

ジョゼフ・ゴードン=レヴィットにアン・ハサウェイ、
続投組のマイケル・ケインに、ゲイリー・オールドマン……
ご贔屓役者がわんさか出てくるからもあるだろう!
いやすんません(笑)

でもね、やっぱ見せ方がおもしろいんですよ。


ヒーロー話をここまできちんと立脚し、
人間臭いドラマにされちゃうんだもんなあ。
かないません。

この世界観と、感情盛り上げ度に関しては、
ここだけの話「アベンジャーズ」ヒーローが20人いてもかなわない(笑)


前作から8年後を描いているので
初めは前作見直しといたほうがよかったかなと思ったけど、
意外に大丈夫。


だんだん感覚戻ってきますし、

なんたって肝心のヒーローが、
前回の闘いでボロボロになり、
引きこもってますから
思い出す余裕大いにアリ(笑)

しかもさらに満身創痍なことになるんですからねえ。


そして
お馴染みのダークな重量感のなか、
今回は
アン・ハサウェイのちゃきちゃきっぷりや、
ジョゼフ・ゴードン=レヴィットという新風が、
心地よく駆け抜ける。

展開にややトバしてる感はなくもないですが、
その分、爽快さがあってこれはこれでよし。

ラストも鳥肌立ちましたねえ。

それにしても
アン・ハサウェイは相当、ボディメイキングがんばってました。

「全世界にあのキャットスーツ姿を見せなければならないと思えば、
誰でもすぐにジムに駆け込むわよ!」とおしゃったそうで(笑)

さすが、
あのバイクにまたがったヒップの流線型をなめた画が
最高に決まってました。


★7/27(金)先行上映、7/28(土)から全国で公開。

「ダークナイト ライジング」公式サイト


末筆ながら事件の被害者の方々とご家族に
心からお悔やみを申し上げます。
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ローマ法王の休日

2012-07-22 16:47:22 | ら行

想像と、ちょっと違ったのです。

「ローマ法王の休日」64点★★★

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ローマ法王が死去し、
ヴァチカンでは次期法王を決める選挙
“コンクラーヴェ”が行われていた。

世界各国から集まった枢機卿たちは
外部と完全に遮断された礼拝堂で、
厳かに、新法王になる心の準備をしている――と思いきや、

実はみな必死に祈りを捧げていた。

「神様、どうか私が選ばれませんように!」――。


そんななか、メルヴィル(ミシェル・ピコリ)が
次期法王に決定する。

心の準備もないまま
彼は民衆の前に立たねばならなくなるが――?!

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ナンニ・モレッティ監督×名優ミシェル・ピコリ。

タイトルやプロットからして
もっとコミカルでほんわかした人生讃歌かと
勝手に想像していたので、
意外にシビアな観賞後感にびっくりしました。


コンクラーヴェで選ばれた新法王が、
重圧に耐えかねてローマの街へ逃げ出すなんて
すごいおもしろい設定だし、

んで、町でいろんな人々に出会って、
自分を取り戻してめでたしめでたし……?
なーんて展開が浮かんでたんですが、


実際のところ
主人公の状況はけっこう深刻で、
そうそう安易な展開にはならなかった。

確かに
コンクラーヴェ中に隣の人の書く名前をカンニングをしたり、
チラチラとまわりを伺ったり
「選ばれませんように……」とみんなが願うシーンなど、
ユーモラスな所は多々あるんですけどね。


それに逃げ出した新法王より、
ヴァチカンに残された100人超の枢機卿たちが、
町の精神科医(演じるのはナンニ・モレッティ監督)の音頭で
生き生きと変化していく様子のほうが楽しげなので、

正しくは
「枢機卿たちの休日」じゃないかと思いました。


★7/21からTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「ローマ法王の休日」公式サイト
コメント (2)
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依頼人

2012-07-21 22:51:25 | あ行

韓国映画で、犯罪もので、
このタイプは確かに珍しいかも。

「依頼人」70点★★★★


***********************

ある夜、ハン(チャン・ヒョク)は
妻の待つマンションに帰宅する。

が、そこに妻の姿はなく、
大量の血痕が残されていた。

そしてハンは待ち構えていた刑事たちに
妻殺しの容疑で
現行犯逮捕されてしまう。

無罪を訴えるハンを
弁護士のカン(ハ・ジョンウ)が弁護することになった。

カンは事件の不自然さに気づき、
独自に調査を始めるのだが――?!

***********************

過激な流血シーンやアクションのない
“韓国初の本格法廷サスペンス”が売り文句。

確かに、このタイプの韓国映画は
あまり見たことがないな。


法廷劇というより、
謎を追う本格ミステリ系で

飾り気も過剰な盛り上げもなく、
簡潔な演出でありながら、
弁護士と検事のライバル関係を静かに匂わせたり、

白か黒かわからない無表情な被告人も、
白かグレーかわからない
ひょうひょうとした弁護士も

全員キャラがたっていて
けっこう見応えありました。

弁護士を手伝う相棒の探偵(ソン・ドンイル)も、
かなり印象に残るキャラだったな。

ただ
韓国の裁判事情に疎い分、
「死体不在のまま即逮捕ってアリなのか?」とか
「裁判員制度なんだ・・・」とか(2008年からだそうです)

基本的な疑問もいくつかありましたが、
まあそれは
後で調べていただいてもよいかと思います。

なんたって
「死体なし」はミステリを
盛り上げる要素として大いに有効ですからね。


差し入れのコーヒーとドーナツを前に
作戦会議をするカン弁護士に、
アメリカの刑事モノの影響を感じてクスリとしましたねえ(笑)


★7/21(土)からシネマート新宿ほか全国で公開。

「依頼人」公式サイト
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The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛

2012-07-20 23:56:28 | さ行

これをタイムリーと言わず
何と言うか。

「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」70点★★★★

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1945年、ビルマ。

ビルマ独立運動の国民的指導者のもとに
生まれたアウンサンスーチー。

だがスーチーが2歳のとき、父が暗殺され
ビルマは軍事政権に支配されてしまう。

ビルマを出たスーチー(ミシェル・ヨー)は
やがてイギリス人の研究者と結婚し、
二男をもうける。

だが母の看護のため
ビルマに帰国した彼女に、
苛酷な運命が待ちかまえていた――。

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リュック・ベッソン監督が
アウンサンスーチー氏の半生を映画化したものです。

正直「え?ベッソン監督?」と危ぶんだけど(かなり失礼!失笑)
しかし大丈夫!

誠意とリスペクトを感じる正統派で、
姿勢を正して133分の注視させる力がありました。

なにより
スーチー女史に扮するミシェル・ヨーの演技は、
素晴らしいの一言。

メリル・ストリープ=サッチャーのような
モーフィング芸とはまた違って、

演技を積み重ね、
時間とともに「ハッ」その人に見せていくタイプで
見応えありました。


スーチーさんの話はだいたい知っていても、
彼女がどういう立場の人なのか、
なぜ、ここまで民衆のアイコンになったのか?

はたまた
イギリスに夫と息子がいたことや、
どのようにしていまの状況になっていったか、など

知ってるようで意外に知らなかった
ビルマの歴史もよくわかります。

ただ一点残念なのは
彼女が政治運動に踏み出す、
超・肝心な最初の決意部分が弱いこと。

おそらく父の影響、民衆の期待、
そして軍事政権の絶句する非道を目の当たりにした怒りから
だとは想像できるけどね。

そして非道はいまも続いている。

この映画を見て、
いま、ビルマが一歩を踏み出している
リアルタイムの状況がよくわかりました。


★7/21(土)から角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開。

「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」公式サイト
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屋根裏部屋のマリアたち

2012-07-19 23:55:38 | や行

久々に愉快でうれしくなる映画でした。

「屋根裏部屋のマリアたち」78点★★★★


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1962年、パリ。

資産家のジャン(ファブリス・ルキーニ)の暮らすアパルトマンの上には、
彼の家のメイドのほか、
あちこちの家に奉仕している
大勢のスペイン系メイドたちが大勢暮らしていた。

そんなメイドたちの存在など知ることもなく
日々を送っていたジャンだが、

ある日、妻(サンドリーヌ・キベルラン)が
古参のメイドを追い出し、
スペイン系の若く美しいメイド・マリア(ナタリア・ベルベケ)を雇ったことで
状況が一変する。

彼女に導かれるようにて、屋根裏にあがったジャンは、
いままで知らなかった世界を知ることになり――?!

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思い出しても
「フフフ」と頬がゆるむようなフランス映画です。

若く美しいメイド・マリアに導かれ、
人生の扉を開いていく資産家の話なんですが、

まず
トイレも水道も共用、
あちこちの家の主人に顎で使われながらも
生き生きと人生を生きる
スペイン系メイドたち暮らしぶりが楽しい。


さらに主人公マリアの
使用人といえども必要な局面では毅然とした態度とる
スッと伸びた姿勢が美しく、

そのほかのメイドたちもみな懐深く、

地に足をつけて、貧しくとも助け合いながら暮らし、
なにより人生を楽しむ方法に長けているんですねえ。

それがなにより大事じゃんって話で。


お金持ちだけど空虚な奥様と使用人って構図が
なんか猫村さんを思い出してウケちゃいました(笑)


屋根裏部屋のメイドたちが作る、
スペインワインにオムレツにパエリア、と
スペインママンの味も実に美味しそう!


人生を楽しんでいる人たちと、一緒にいることもまた大切だなあと
こっちまで楽しくなるし、
幸せを分けてもらえるよなあと、

ニヤニヤしながら観ました。

★7/21(土)からBunkamura ル・シネマほか全国順次公開。

「屋根裏部屋のマリアたち」公式サイト
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