ジャクソン・ブラウンは、2009年春まで続くワールド・ツアーを、初日の9月15日ワシントンDC・ワーナー・シアター公演を皮切りにスタート。彼にとっては6年振りとなるスタジオ・アルバム『Time The Conqueror/時の征者』をひっさげてのツアー。ワールド・ツアーの序盤となる全米ツアーを、この11月上旬に終えて、遂に日本に上陸しました。この後はオーストラリア・ヨーロッパツアーが続く。
ツアーに同行するのは、15年来のバンド・メンバー達。ケヴィン・マコーミック(ベース)、マーク・ゴールデンバーグ(ギター)、モーリシオ・ルワック(ドラムス)、ジェフ・ヤング(キーボード、バック・ヴォーカル)。彼らは1993年の「アイム・アライヴ」以来ブラウンと活動を共にしており、「ルッキング・イースト」('96年)と「ザ・ネイキッド・ライド・ホーム」('02年)にも参加している。『Time The Conqueror/時の征者』から新たに加わったヴォーカリストのシャヴォンヌ・モリスとアリシア・ミルズがブラウンに出会ったのは2001年。サウス・ロサンゼルスのワシントン・プレパラトリー高校の学生時代、フレッド・マーティン&ザ・レヴァイト・キャンプと歌っていた頃でした。彼女たちはブラウンが共同プロデュースを手がけた演奏にも参加し、6曲を提供したザ・レヴァイト・キャンプの2006年のデビュー作『サム・ブリッジズ』に大々的にフィーチャーされています。
ジャクソンは近年、アメリカ・イギリス・オーストラリアで行われたソロ・アコースティック・ツアーで録音された2枚のライヴ・アルバムをリリースしています。グラミー賞ノミネート作「ジャクソン・ブラウン—ソロ・アコースティック第一集」('05年)と「第二集」('08年)です。ブラウンがピアノとギターを交互に演奏し、キャリア全体を網羅する曲目を演奏する姿がフィーチャーされている。今年発売された「第二集」に関しては、アンソニー・デュカキスがローリング・ストーン誌で4つ星の評価を付け、「ブラウンの最高の状態。オーディエンス、個人的な経験、彼を取り巻く世界の全てが曲に織り込まれている。その曲の響きは、簡単に失われることがないだろう」と記しました。
今回のワールド・ツアーの全米日程では、限定数のプレミアム・チケットが発売され、収益金がブラウンが長年行って来た平和、社会正義、環境、未来における非核のための活動の精神に則り、グアカモレ基金に寄付され、公共の利益のために活動する非営利団体のサポートに充てられる。
1972年に発売され高い評価を受けた、セルフ・タイトルのデビュー・アルバム以来、ジャクソン・ブラウンは誠実さ、感情、パーソナルな政治に満ちた、ソングライティングとパフォーマンスの一ジャンルを定義づけて来ました。彼はロックンロールの殿堂入り(2004年)やソングライターの殿堂入り(2007年)を果たしたアーティストとして知られており、最近ではジョン・スタインベック賞やチャピン・ワールド・ハンガー・イヤーのハリー・チャピンヒューマニタリアン賞などの人道主義関連の栄誉も受賞しています。
彼の顔は・・・やはりヒゲ面だった!(笑)アメリカツアー前半はヒゲを剃っていましたが、後半は伸ばしていましたので、どちらかな?と思っていました。サングラスをかけて、「擬似」アルバム・ジャケットの顔で(笑)約束の時間に現れてくれた。まずは1980年のツアーの貴重な音源を、メールでの約束を果たして日本まで持参してくれました。彼の誠実な人柄の変化の無さには素直に頭が下がりました。ずっと青年のイメージだったジャクソン・ブラウンも何と今では60歳だ。たくわえたヒゲが真っ白なのも納得出来る。しかし、リハーサル時の歌声、全く変わらぬ往年の歌声の健在振りには、正直驚いた。
「今回のライヴはアメリカと同様、休憩をはさんでの2部構成になるんだ。ただ、アメリカでは大統領選が演奏曲にも影響していたんだけど、選挙も終わったし、日本のファンは投票には関係ないからね。」と話してくれた。
さて会場はHOLD OUTならぬ「SOLD OUT」状態。その昔は女性ファンが多く、黄色い声援が飛び交っていた彼のコンサートも、今回はアラウンド50(笑)のファンがほとんど。まるで太田裕美コンサートのような温かい雰囲気。会場がかつてのような大ホールでないことも、彼を身近に感じることが出来るのかも知れません。最近になく、観客の平均年齢が高いコンサート・・・しかしノリのいい、コンサートの楽しみ方を心得ている年代であるとも言えると思います。正直みんな、ニューアルバムからの曲より、昔の曲を期待しているような気がしました。
定刻を少し過ぎ、遂にジャクソンの久々のコンサートが開幕しました。結果だけ言えば、前半はアメリカでのセットリストと同じ曲の演奏。ただし、合計曲数は日本の方が多いというものでした。声も良く、ついこの前の「ザ・フー」のコンサートとは比較にならないライヴです!ただ、やはりニューアルバムをあまり聴きこんでいない、いや、買っていないかも知れないファンが多かったと思います。
「OSAKAに戻ってきたよ!」と言いながらのオープニングは、アルバム「Hold Out」からの「Boulevard」。そして「Looking East」と「I’m Alive」の収録曲を経て、「次はとても古い曲です」と紹介してピアノに座り、「Fountain Of Sorrow」。シャヴォンヌ・モリスとアリシア・ミルズの2人のコーラスがとても良い響きです。メンバー紹介をして、ニューアルバムから3曲。「Off Of Wonderland」の歌詞に出てくる「ジョン」は、ジョン・レノンのことです。さすがにニューアルバムの曲は、レコーディング・メンバーで演奏しているだけあって安心して聴く事が出来ます。というか、他の曲と一味違いました。そして「Looking East」収録の「Culver Moon」。前回よりもパワーアップした出来には驚きました。前半のハイライトと言ったら言い過ぎかも知れませんが、ここは聴き所です。そして新曲を1曲挟んで、流れて来たお馴染みのピアノのイントロ。ここで会場も盛り上がります。「Doctor My Eyes」。メドレーで、「About My Imagination」へと続き、10分ほどの休憩に入りました。前半の感想。やはり昔の曲がいい。僕は素直にそう思います。青春時代の思い出がつまっているからかも知れませんが、やはりメロディも美しいものが多かったと思うのは僕だけではないハズです。
さて、第二部。アコースティクギターを抱えたジャクソン・ブラウンが登場。ファーストアルバムから「Something Fine」。何度も聴いた曲ですが、途中からシャヴォンヌ・モリスとアリシア・ミルズのコーラスが加わり、特に彼女らがスポットライトを浴びて歌うシーンは素晴らしい場面でした。次の曲の前に大きい声で、「Take It Easy」のリクエストがされ、ジャクソンは「Take It Easy」と笑いながら返答。演奏は「These Days」。(笑)アルバム「For Everyman」からの曲です。次は「Lives In The Balance」というアメリカ公演の流れでしたが、ジャクソンがドラムのモリーシオに相談して、「For Taking The Trouble」の演奏に。その後「Lives In The Balance」のアコースティック・バージョン。曲の途中からモリスとミルズがリード・ボーカルを取り、マーク・ゴーデンバーグの演奏が冴え、魅力がパワーアップしました。今回のライヴの中でも見所の1つでした!ここでニューアルバムからまたしても2曲。別にニューアルバムを嫌っている訳ではありません。
そして時々リクエストの声が上がっていた、アメリカ公演では演奏されなかった「Late for the Sky」。ソロで始まり徐々にバンドが加わるとお馴染みのアレンジですが、やはりいい曲はいい。「Far From The Arms Of Hunger」はニューアルバムの最後のメッセージソング。この演奏を最後に、ここからはお約束の曲が会場を盛り上げて行きます。
「The Pretender」のイントロが流れてくると、もうすぐ終わりだよと言う彼の言葉が聞こえて来るようですが、ジャクソンはいつものギターではなくピアノを演奏。「Running On Empty」で観衆は総立ちになり、これ以降はもう座っている場合じゃない。ここで終わられては困るとアンコール!アメリカでは「I Am A Patriot」でしたが、ここは「The Load-out〜Stay」。ファンも平均年齢が高い常連さんが多かった為か、「Tonight the people were so fine」の歌詞のところで、しっかり拍手と歓声が湧き起こります。「Stay」に移行してからは、ジャクソンが観客にコーラスを促し大合唱。曲が終わった後も拍手が止みませんでした。ここで終了という雰囲気もあったのですが、ジャクソン自らがドラムのモリーシオにもう1曲演奏しようとリクエスト。ローディがギターを持って来ましたが、そのギターをチェンジさせます。「??」ここでオバマ氏が新しい大統領になったことを喜ぶコメントを語ったので、なるほどと思ったら案の定「I Am A Patriot」。アルバム「World Motion」収録曲ですが、この曲が非常に盛り上がりました。ファンはこれでコンサートは終了と思ったでしょうし、ジャクソンもそうしようとしていました。
が!ここで・・・スタッフがアコースティック・ギターを持って来て、ジャクソンに「Take It Easy」をやるようにと手渡したのです。ジャクソンは驚いた表情を見せましたが、「Take It Easy」を何とイーグルス・バージョンで演奏してくれました。会場は大喜び拍手喝采でした。
全てが終わったのが10時前。これまで見てきた彼のライヴでは、2003年5月4日の中野サンプラザの3時間半という最高のライヴがありましたが、今回のライヴもそれに負けず劣らずの内容あるコンサートでした。ただ彼のファンは大人が多いので、新曲について学習不足?その為新曲は盛り上がらず、昔の曲が盛り上がるのはいつもの光景。毎回、かなりのリクエストの声が彼のコンサートで飛び交います。特に大阪ではその傾向が顕著です。しかし今回はそれもやや控え目でした。ジャクソンがリクエストの声にパッと応えて演奏するという、いつもの光景もこの日は見ることがありませんでした。しかし素晴らしいコンサートでした。
来年はディヴィッド・リンドレーとアコースティックライブのために来日コンサートという噂が早くも流れていますので、実現を期待しましょう!
SET LIST
Boulevard
The Barricades Of Heaven
Everywhere I Go
Fountain Of Sorrow
Time The Conqueror
Off Of Wonderland
Live Nude Cabaret
Culver Moon
Giving That Heaven Away
Doctor My Eyes ~ About My Imagination
(intermission)
Something Fine
These Days
For Taking The Troubles
Lives In The Balance
Going Down To Cuba
Just Say Yeah
Late For The Sky
Far From The Arms Of Hunger
The Pretender
Running On Empty
(encore)
The Load-out〜Stay
I Am A Patriot
Take It Easy