スポーツ用品ならあの店で、楽器ならこの店で・・・マニアはあちこちのお店を知っていました。しかし、今はお店自体がそもそもありません。大阪・梅田でスニーカーを買おうと思えばどこへ行きますか?「STEP」ですか?「ABCマート」ですか?CDを買おうと思えば「タワレコ」ですか?
CDDやDVD、書籍はアマゾン等の通販でも良いでしょう。でも、シューズやウエア等は、実際の商品を手に取ってサイズを合わせて買う方が楽しいし、思ったものと違うから返品するという手間も発生しません。今ではそういうことがしたくても出来ない。
でも、80年代の「阪急イングス」は、マニアも納得のスペースがB2から3Fに、ぎっしり詰まっていたのです。この昭和59年(1984年)の雑誌広告をご覧下さい。若者が欲しいものがここに行けば手に入る。1982年のオープン時には若者が殺到し、本当に話題になり大盛況でした。
スポーツ、音楽、映像に関するものが、こんなにも多部門に渡るグッズが、店内に所狭しと置かれていたのです。
スポーツ、アウトドア大好きはB2から。B2はシーズンスポーツとアウトドアのフロア。「ウエストコーストショップ」というのも人気でした。B1に行くとゴルフ用品がズラリ。初心者向けだけではなく、上級者向けのクラブまで揃っていました。
ダンス&バレエのコーナーでは、当時大人気だったレオタードを、ギャル達が選んでいました。
1Fは当時大ブームだったテニス用品が中心。
スポーツシューズのコーナーでは、ピタッとフィットする別注もシューズリペアもOKでした。
B2には上左の写真のように、乗馬コーナーもありましたし、右のようにテニスのガット張りもここで受け付けていました。
音楽・映像に興味がある人は、2~3Fへ。2Fにはあらゆるジャンルの楽器が勢揃いだし、クイックDPEサービスで1時間で写真の現像からプリントが出来上がり。今では当たり前でも、当時は驚異的なサービスでした。3Fはオーディオとレコードが中心でしたが、ここで驚きのシステムが「コンピューラック」。
カウンターでレコードを選ぶと、自動的にラックが動いて、お目当てのレコードの所に赤ランプが点きました。この頃から普及し出したビデオの編集をしてくれるコーナーもありました。まさに時代の先端を行く「たからばこ」だったのです。
3Fにあるリスニングルームでは、いろいろなスピーカーを選んで、お気に入りのレコードの音を聴き比べることも出来ました。じっくり見れば見るほど、それだけじっくり楽しめる「遊び」空間でした。
1990年代前半には売上約120億円を上げ、「ings」というネオンサインが目印。 2004年(平成16年)4月に阪急イングスから「阪急イングス館」としてリニューアルされて子供服やスポーツ用品に特化してから売上は落ち込み、阪急百貨店うめだ本館が全館開業する2012年(平成24年)11月18日にイングス館は閉鎖となりました。
現在の若者に必須のスマホもゲームも、それらは1人で楽しむもの。一方阪急イングスで販売していた当時の人気の品物は、仲間と楽しむものという大きな違いがあります。今では「仲間と遊ぶという文化」が崩壊しているのです。だから、今は異性と交際しない・結婚しない若者も増えている。大学生の間でも、飲み会も減り、部活をする若者も、サークルさえも減っています。悲しいことです。