2009年上半期第141回直木賞受賞作。
「オール読物」2008年1、6&12月号掲載、254頁。
戦前、華族のお嬢様とお付きの運転手が織りなすちょっとドキドキする連作短編集。
彼女の淡い恋心も、病み上がりで掛けた間違い電話によって無残にも打ち砕かれることになろうとは・・・。
読者は、物語の方々に仕掛けられた罠をそれとなく意識しつつ読み進めるのだが、それらが感動的なエピローグに繋がっていることを、後になって知ることになる。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★★)
選者評:井上ひさし氏
「一通の間違い電話が、二度と逢うことのない良家令嬢と青年将校とのこの世で一度の魂の通い道になる。見えないものを見えるようにするのが、詩や劇や絵や小説など芸術本来の働きであるとすれば、周到に書かれたこの場面こそは、まさにその芸術の達成そのものと言ってよいだろう。」