教室では私の横の席が一番質問しやすいことから、その席を生徒が取り合いすることがあります。特に女子生徒はなるべく早く来てその席を取ろうとするのですが、ある日先に座っている生徒に後から来た中学1年生の女子生徒二人が「あ―また先に座ってる、○○ちゃん先生のこと好きなんや~、ワーイ、レズやレズや気持ち悪―い!」そう言われた子も最初は口をあんぐりでしたが、売り言葉に買い言葉でその場は展開し、彼女たちの間には険悪な雰囲気もなく冗談として自然に時は流れていきました。こんな発言もいつかはあろうかと待ち構えてはいたものの、あまりに突然やってきたこの差別発言に私も開いた口がふさがらず、どう注意したものか考えているうちに、子どもたちの会話はいつの間にか違う話題に移っていました。何も言えないままで歯がゆい思いがしましたが、ここで話を引き戻すのも不自然と考え、次の機会を待つことにしました。今の中学1年生がレズという言葉にどんな思いを持っているのだろうと考えながら、誰にも教えてもらっていないのだから注意するというより教えてあげなければ・・と思っていました。
そして先日のことです。今度はその差別発言をした二人が先にやってきました。
「ねえ、この間レズビアンだとか言って気持ち悪い―って言ってたよね。どうしてそう思うの? 」
「え―気持ち悪いなんて言ってないよ―」
「そういう人はたくさんいるんだよ、知ってる?先生の友達にもそういう人はいるよ」
「うん、知ってる、この間テレビで見た、外国の人が結婚したって言ってた、キスしてたからびっくりした」
「そう、どこにでもそういう人はいるんだし、おかしなことじゃないんだよ。気持ち悪いなんて言ったらその人たちはどう思うかなあ?」
「気持ち悪いなんて言ってないよ」
もう一人は
「ねえ、レズビアンって何? レズのこと?」
「そうよ。でもレズとかホモっていう言い方は差別した言い方だからレズビアンとかゲイとかって言ったほうがいいね」
「ホモって何?」
「・・・(このレベルまでしか知らないんだー)」
彼女たちは叱られると思ったのか「そんなこと言ってないよ」の繰り返しでしたが、最近の海外のニュースのおかげか(まだまだ少ないとは思いますが・・)、存在を知らないわけではない。そして現実に存在する人に向かってそのような発言はいけないということも言われればなんとなくわかる。とっさに出てしまったその言葉や感覚を彼女たちはどこで身につけたのか、もっと話がしてみたいなと思ったのですが、うまくかわされてしまいました。でもこの年齢の子どもたちならきっと、すっきりと理解できるのではないかと感じました。早いほうがいい、人間の多様性を知り、自分らしく生きていけばいいということを知るのは。そう実感した一日でした。やっぱり教育って大切ですよね。一日も早く、最後の人権問題といわれるこの問題を教育が取り上げることが必要です。先生方、よろしくお願いします。