国立文楽劇場開場30周年記念
七世竹本住大夫引退公演
通し狂言 菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
第1部 午前10時30分開演
初 段 大内の段
加茂堤の段
筆法伝授の段
築地の段
二段目 杖折檻の段
東天紅の段
丞相名残の段
第2部 午後4時開演
三段目 車曳の段
茶筅酒の段
喧嘩の段
訴訟の段
引退狂言 桜丸切腹の段
四段目 天拝山の段
寺入りの段
寺子屋の段
今回はひとりで観劇が早々に決まっていたので自分ひとり分くらいいつでもいいやとのんびり構えていたら、まさかの住大夫さん引退…。遅れてきた文楽ファンとしては…間に合ってよかった、と昨年の伊賀越えを思い出すのです。
そんな訳で思わぬチケット争奪戦に参戦して、通しで二日見ることになりました。
その第一日目。
あかん…。疲れが取れぬ。
よし、今日は居眠りを許そう。疲れが取れるなら寝ることをよしとしよう。
案の定、第一部は寝落ちにつぐ寝落ち。熟睡ではないので、ちゃんと筋は追っていたのですが、記憶が飛びがち。それでも、三業のみなさんの熱気、また客席の熱気をひしひしと感じながら寝落ちしておりました。多くは語れない?!
おかげさまで後半はお目目ぱっちり。一部は一等席でしたが、二部は二等席からがん見、がん聞きです。
悲劇の前にはほっこりさせる場面が配置されていたり、若手中堅の大夫さんたちの迫力。呼応する三味線、そして舞台で繰り広げられる人形遣いの方々の細やかな表現。
そして、その時は来ました。
全体についてはもう一度見たときの感想にとっておくとして(というか寝ていて書けない)。
今回はこちらのことを…。
その時は来ました…。
くるり、
会場いっぱいの拍手が鳴りやみません。
そう、今回が大阪での引退興行となる竹本住大夫さんが床に現われたのです。
拍手は「ありがとう」「お疲れ様でした」そんないろんな感情が込められた心からの。
長い太夫人生の残り少ない一回、それを会場の方々と共有できたことを私も噛み締めました。
遅れてきた文楽ファンは、住大夫さんの至福の語りに出会えたことを幸運に思います。
盆が回っただけで会場の空気を一心に集める。その瞬間を知ることができたのも。
この段は、人形も吉田簑助さんと吉田文雀さんの人間国宝が遣われ、住大夫さんの引退の花道を飾られています。
「桜丸切腹の段」
親子の情愛が胸にひびきました。だからあかんて、住大夫さんに「なんまいだ」言わせたら。泣いちゃうじゃないか…。
床本を持ち上げ天に奉げ、ゆっくりと頭を下げられました。
ありがとうございました。
再び、会場が拍手に包まれたのでした。