こんにちは。カンタベリー・ロック特集です。
前回に引き続き、ハットフィールド&ザ・ノースですね。
今回は名作とされる1975年の作品でセカンド・アルバム「ロッターズ・クラブ」です。
メンバーはフィル・ミラー(g)、リチャード・シンクレア(b、v)、ピップ・パイル(d)、デイヴ・スチュアート(k)と前作と同じラインナップ。
このアルバム発表後、彼らは解散し、ミラーとスチュアートはナショナル・ヘルスを結成。パイルも後に合流することになります。
本作について、私は、ジャズ的なものをロックに導入するという方法論が盛んだったカンタベリー・ロックの中で、一つの理想郷にたどり着いた作品だと思っています。ソフト・マシーンがリスナーの好みよりも自分たちがやりたいことをやるという感じで突き進んでいき、キャラヴァンが大衆の好みを意識し続けたのと違い、絶妙なバランス感覚でジャズ的な味わいとロックらしいエネルギーをミックスしたバンドととらえています。そのミックスの仕方が実にスマートなんですよね。全然強引ではない。キャラヴァンのようにポップではないんですが、耳になじみやすい点も素晴らしいと思います。
まず、ご紹介するのは2曲目の「Lounging there trying」。これはフュージョンっぽいんですが、いい曲です。1975年という時代を考えると、実におしゃれだし、テクニカルです。あまり、イギリスっぽくないですね。
Hatfield and the North - Lounging there trying
次は、ずばりプログレといった感じの曲 「The Yes No Interlude」。ジャズ風味がありながら、あくまでロックです。クリムゾン、ELPのようなところもありますけど、全体のイメージは異なります。とにかく、ものすごいエネルギーで、展開力があります。演奏技術は高度ですが、すごく聴きやすい。ソフトマシーンのように聴き手を置いていってしまうことはない。聴きやすいアヴァンギャルドですね。混沌としながら、スマートです。
Hatfield And The North: The Yes No Interlude
次は「Fitter Stoke Has A Bath」。シンクレアののんびりしたヴォーカルが流れるとキャラヴァンっぽくなりますが、曲が進行すると、全く違う音楽になります。ポップなトーンから、ジャズ風味あるプログレに移行していくので、あれっ?という感じになります。最後の方は効果音みたいになってしまうのがちょっと残念。
Hatfield & The North - Fitter Stoke Has A Bath - 1975
もう1曲「Underdub」。おしゃれなフュージョンです。シンクレアのベースがうまい!完全にジャズの人ですね。他のメンバーもロック・サイドの人間って感じがしません。演奏が上手。イギリスのロック・バンドというより、アメリカのスタジオ・ミュージシャンの演奏に聞こえてしまいそうな曲。
Hatfield & The North - Underdub
このアルバムには大作「Mumps」が入っているのですが、それはあえて省略します。私の紹介文を見て、気になった人はぜひ動画サイトをチェックしてみてください。素晴らしい曲だと思います。
ハットフィールド&ザ・ノースはソフト・マシーン、キャラヴァンほど有名ではありませんが、高度な演奏力と抜群のセンスによって、一つの高みに上りつめたバンドだと思います。音の宝石箱のようなサウンドは一聴の価値あり。フュージョン、そしてクリムゾンの緊張感のあるサウンドが好きなら、けっこう好きになるかも。
次回のカンタベリー・ロック特集はキャラヴァンを予定しています。