久々にカンタベリー・ロック特集です。
この特集を終えてしまわないと気がすまないので、今回からは連続していきたいと思います。
今回はナショナル・ヘルスのファースト・アルバムです。
時は1978年。もうプログレは終わったと言われている時代ですね。まあ、日本ではUKがブレイクしますけど、なんとなく大真面目にプログレをやっていると珍しい感じでした。
でも、カンタベリー・ロックはジャズ・ロックのイメージもあるので、プログレをまだやってるんだ!なんて非難はされなかったかな?UKのように、注目されてなかったし。
さて、カンタベリー・ロックの最終形態ともいわれるナショナル・ヘルスは、カンタベリー・ロックの中で似たタイプのハットフィールド&ザ・ノースとギルガメッシュの合体プロジェクトから始まったようです。
結成は1975年。元エッグのモント・キャンベル(b)、元ハットのデイブ・スチュアート(k)、元ギルガメッシュのアラン・ゴーウェン(k)、元ハットのフィル・ミラー(g)、元ギルガメのフィル・リー(g)、ギルガメッシュのゲストヴォーカルだったアマンダ・パーソンズにより結成されます。
しかし、ファースト・アルバム発表までに、かなりメンバーは流動的で、時間がかかりました。1976年にキャンベル脱退、元ギルガメでコロシアムⅡにもいたニール・マーレイ加入。ドラムにはビル・ブラッフォード加入。1977年にはビルがUK参加のために脱退し、元ゴング、元ハットのビップ・パイルが加入。ゴーウェン、パーソンズ脱退。そして、結局はスチュアート、ミラー、マーレイ、パイルというメンバーでファースト・アルバムを製作。元メンバーのゴーウェンとパーソンズはゲストとして参加してます。結局、正式メンバー3人は元ハットになってしまってます。でも、いろいろ変遷を経たせいか、ハットの音楽とはちょっと別物の印象。なお、キャラヴァンでの客演で有名なジミー・ヘイスティングス(フルート、クラリネット)が参加。
このアルバムの特徴は、まず1曲が長いということです。5曲しか入っていません。10分超の曲が3曲あるのです。そして、全体的にクールというかシリアスな印象です。ハットの「ロッターズ・クラブ」にはややポップな質感があったのに対し、かなりプログレ的なこだわりを感じる作品です。やはり、ジャズ・ロックではなく、プログレッシブ・ロックの混沌さの印象が強いと感じます。ポップな音楽になることを拒否している・・・そんなイメージもあります。聴き手にかなりの集中力を求めまる音楽だと思います。ぼんやり聴いていると、わかりにくい音楽かもしれません。一般の音楽ファンよりマニアのための音楽なのかな?
それにしても、ホワイト・スネイクで有名なニール・マーレイがこんなテクニカルなバンドで演奏していたとは。
彼についてはハード・ロック系のベーシストのイメージが強いので意外な感じがありますね。
1曲目の「Tenemos Roads」はメリハリのある複雑な展開を持つ作品。シンセの柔らかな音とメロディに親しみを感じるところもありますが、それはあくまで楽曲の一部という感じで、曲は遊び心ある展開を示し、テクニカルでスリリングな音楽を構築していきます。演奏力はさすがのレベル。
印象的なのはアマンダの高音ヴォーカル。曲のアクセントになるような役割を務めています。「凝った音楽、凝ったロック」というのが聴き終えての感想。
Tenemos Roads
もう1曲ご紹介しましょう。「Borogroves (Part One)」です。
重いギターといかにもプログレといった感じのシンセが強烈な導入部です。
でも、予想がつかない変化に富む展開がすごい。遊び心がたっぷりあります。
クラシック音楽を感じるような部分もあるんですよね。
ぼんやり、聴いていると、「あれ、どの曲聴いてたんだっけ?」と思ってしまうほどの曲の変化があります。
アマンダのスキャット的なヴォーカルはやはり印象的。
真剣に聴くと、かなり面白い曲で、圧倒されます。
プログレッシブ・ロックの一つの到達点かも。
でも、大衆的な音楽とは言い難い作品です。
Borogroves (Part One)
次回はセカンド・アルバムをご紹介します。
そこで、ナショナル・ヘルスのご紹介は終了。
あとはカンタベリー・ロック系のバンドを2つほど取り上げてカンタベリー・ロック特集を終えたいと思います。