8月10日夜、NHK総合で「上白石萌音のはるかなる古代文明マヤ」という特別番組があり、興味深く見た。東京国立博物館で開かれている特別展にあわせ、マヤ文明の実像に迫る特別番組のようである。メキシコに花開いた古代文明マヤ。紀元前1100年ごろ姿を現し、スペインに征服されるまで続いた文明は、世界史上類を見ないものであった。
まず、ユカタン半島にあるジャングルの都市、世界遺産・パレンケ遺跡を紹介していた。そこで、1994年に真赤に染まった遺骨が発見されたが、辰砂という鉱物で覆われていたため赤かったので、レイナロハ(赤の女王)と呼ばれた。ヒスイ等の緑の石の仮面をつけて埋葬されていた。仮面は国立博物館の特別展で展示されている。赤は血を意味し、赤くすることで死者を生き返させると信じられていたという。それより40年前には、そのピラミッドからパカル王の墓が発見され、やはりヒスイの仮面をつけており、緑は植物、命、再生の象徴の色という。
マヤ文明では、世界は天上界、地上界、地下界から成り、それらを繋ぐのがピラミッドである。生まれて、死んで、そしてまた生まれるという世界観で生と死をとらえていた。DNA鑑定から、レイナロハはパカル王妃であるとみられる。また、パレンケ遺跡の石灰岩の宮殿には、水洗トイレも備えた水路設計がされていたというから驚きである。水が豊富だったため、ジャングルで都市が栄えたようである。
また、最近最古のマヤ遺跡とみられるアグアダ・フェニックス遺跡が、日本人の学者によって発見された。紀元前1100年頃(縄文時代終わり頃)から造られはじめたようである。大きな基壇が発掘され、そこが周辺住民が集まる共同祭祀場であったことが伺われるという。ヒト型のヒスイやワニ型のヒスイも発掘されている。古代マヤ人は太陽の動きを観測し、行事を決めていたようである。今でも発掘作業が行われている。
また、エル・パルマ-ル遺跡にはマヤ文字が多数発見され、解読が進められている。発掘チームのリーダーは日本人で、今は、3次元測量といって、写真から3Dモデルを作り解析する方法がとられ、謎の多いマヤ文字の解析が進んでいるという。マヤ文字は、日本語に似ているところがあると聞いて驚いた。解読されたマヤ文字から見えてきたのは戦争の実態という。8~10世紀に多くの都市が衰退していったが、湖の地層から10世紀頃、干ばつと大雨の繰り返しという極端な異常気象がわかり、それが原因と思われる。一部は衰退したが、繁栄していたところもあり、それが有名なチチェンイツァである。
チチェンイツァには高さ30mもあるククルカン神殿という大ピラミッドがあり、年に2回、春分の日と秋分の日の夕方に、ククルカンという蛇神の胴体がピラミッドに浮かび上がるという光による天体現象が見られる。ピラミッドは91段の階段が四方で364段に最上階の神殿に上るのに最後の1段を加えて、計365段となっており、すぐれた天文学の知識が生かされている。
チチェンイツァを訪れたのは、2008年3月19日で春分の日の前日であったが、天候にも恵まれ、奇跡的にはっきりと胴体部分を見ることができた。春分の日当日は、世界中から人が集まるが、前日は人混みは全くなく快適にククルカンの降臨を見ることができた。今回の特集番組でマヤ文明のことがより詳しく理解でき、マヤ遺跡への旅行の思い出がよみがえってきた。さすがNHKのドキュメンタリーといった印象を持った。
ククルカンの降臨(2008 3/19)
ビクトリア・バンクーバー・メキシコ旅行アルバム(4.55~):https://youtu.be/Lr5wspyeq58
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