還付金詐欺直前まで気付かず「まさか自分が」ショック ATMを指示されるも間一髪
2021/11/08 08:55
(岐阜新聞)
岐阜県加茂郡内に暮らす60代の女性がニセ電話詐欺の被害に遭いそうになった。偶然がなければ現金をだまし取られていた。「今思うとなんで私が」と肩を落とす女性は、自分と同じように悔しい思いをする被害者が出ないよう、加茂署で取材に応じた。「新型コロナで友人と会えてなくて(詐欺被害の増加や手口について)情報共有できてなかった」。当時を振り返りながら力を込めた。「ちょっとでもおかしいと思ったら一人で抱え込まず、誰かに相談してほしい」
いわゆる還付金詐欺だった。3月中旬のある日、自宅の固定電話が鳴った。女性が出ると役場の職員をかたる男が「介護保険の還付金が3万円分ある。銀行で手続きができる」と言った。話しぶりは「たどたどしさもあったけど、優しそうだった」。それ以上に、うまい話につられてしまった。「お金がもらえるのなら、もらおうと思った」
電話を切ってしばらくすると金融機関の職員を名乗る別の男から電話が入った。コロナ禍だから窓口ではなく、現金自動預払機(ATM)を利用するように指示してきた。「自宅を出る時とATMに着いた時、この番号に掛けてほしい」と「050」から始まる電話番号を教えられた。
女性は準備し、指示された通り電話を入れてから金融機関に向かった。幸いだったのはATMが混んでいたこと。混雑を避けようと、再び電話をして「今、窓口にいます」と告げると、一方的に切られた。窓口で職員に経緯を話し、初めて自分がだまされていたと分かった。
日頃から夫には怪しい電話には気を付けるよう注意されていた。自分でも警戒しているつもりだった。それでもだまされかけた。「役場に問い合わせるなどすればよかった。自分の無知さにショックを受けた」と女性。新型コロナが感染拡大する前は、体操や手芸の教室に月6回ほど通っており、友人たちとの会話でも詐欺などが話題に上がっていた。それがコロナ禍でできなくなった。「人と会う機会が減り、詐欺に関する情報が耳に入ってこなかった」と嘆いた。
あの電話以来、女性は自宅の固定電話に自動通話録音警告機を取り付けた。悔しかった自分の体験を隠すのではなく、友人たちに話している。詐欺だと気付く人が少しでも増えるように願っている。「身近な人に言われることで人ごとじゃないと思える。ちょっとでもおかしいと思ったら、誰かに相談してほしい」と話した。
加茂署生活安全課の担当者は「ATMに誘導する電話は絶対に詐欺なので、気を付けてほしい」と呼び掛けている。