ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

沖縄の悲観

2019年02月08日 | 通信-沖縄関連

 沖縄のサクラはヒカンザクラという種で、寒さを経て花が開くという性質を持つので、サクラの代表であるソメイヨシノとは逆に北から南、山地から平地へとサクラ前線は移動していく。ちなみに、沖縄の主な桜祭りの開催期日を北から記すと、
 本部町八重岳、1月19日~2月3日
 今帰仁村、1月26日~2月11日
 那覇市、2月20日~2月24日
となっている。本部町、今帰仁村はおそらくもう満開と思われる。私の住んでいる宜野湾市(那覇より北へ20キロほど)の開花状況は、2月7日現在で概ね3分咲。
     

 サクラと言えば気になっていたこと1つ。沖縄のヒカンザクラは冬に咲き濃い桃色をしている。冬に咲くので寒桜、花の色が桃色をしているので緋と付いて緋寒桜となる。若い頃に植物に詳しい先輩からそう教わって、その後文献でもそう確認している。であるが、ラジオからはヒカンザクラでは無く、カンヒザクラという名称を多く聞く。
 実はヒカンザクラと教わった先輩も、既にその頃に「カンヒザクラとも言う」と仰っていた。「ヒカンザクラだとヒガンザクラ(彼岸桜)と混同するから」とのこと。ところがラジオの説明では「ヒカンザクラだと悲観に聞こえるから」とのこと。緋寒が悲観とは、私はまったく連想しなかった。緋寒桜、言葉としてきれいだと思うが、いかが?

 悲観と言えば思い浮かぶこと1つ。70数年前の沖縄戦で悲惨な目にあったウチナーンチュは、子や孫にその悲惨を語り、戦争を知らない子供たちは「戦争はやってはいけないこと」と強く心に刻まれた。そんな1人である私は、やがて爺さんと呼ばれる齢になるのだが、戦争の悲惨を次代に伝えることができるほどの知識をまだまだ得られていない。
 私が聞いた悲惨は、大雑把に言うと「命を奪うのは飛んでくる鉄の暴風、だけでなく、味方であるはずの、自分たちを守ってくれるはずの日本軍に赤子を殺されたり、安全な壕を追い出されたり、スパイ扱いされて撃たれた」などということ。戦争という極限状況の中では、兵士の精神状態も異常であり、異常な行為も仕方なかったのかもしれないが、それはそれで「戦争は優しい人間も鬼に変えてしまう」といった大きな教訓になる。
 悲惨は戦後も続く。土地を奪われる。それは一過性のものであったが、今もなお続いている悲惨もある。差別意識丸出しの日米地位協定だ。「沖縄で法を犯したアメリカ人を、何で日本の法律で裁くことができないんだ」といったこと。泣き寝入りしたウチナーンチュは多くいると聞いている。それは幸せに暮らしたい生活上の大きなリスクである。
     

 国は新たな基地を沖縄に造ろうとしている。「普天間を返す代わり」と言い、まるで、普天間に基地があることは当然で、「普天間を返すならその代替地は沖縄が提供するというのも当然」であるように言うが、それは本当に当然なのか?国全体の問題だよ。
 現在の世界情勢から考えてある程度の軍事基地は必要だと私は思っているので、「沖縄から米軍基地は無くならない」が私の悲観にはならない。「差別的日米地位協定を改善しようという意思が国に無い」、「近所のどこぞの国のような強権的手法で沖縄という1地方を国に従わせる」、そのような国と沖縄の関係に私は未来の沖縄を悲観する。
     

 記:2019.2.8 島乃ガジ丸

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行 


薬になる庭の食物2:果物

2019年02月06日 | 飲食:加工品・薬草・他

 薬草研究家であるHさんから「薬草を表にしたものを老人クラブの仲間たちのために役に立てたい」と半年ほど前に依頼があり、Hさんからあれこれ薬草の資料をお借りしてさっそくその作業に取り掛かり、その後、他の年配の方々からあれこれ意見を取り入れ、あれこれ紆余曲折があって、約半年後の年明け1月になってやっと冊子が完成。
 完成はしかし、「その1」であり、これから「その2」、「その3」と続く予定。取り敢えず完成した「その1」の内容は、「普通に食べて薬になるもの」、それを1冊、35ページほどの冊子にまとめた。普通に食べるということは普段食ということで、スーパーや八百屋に行けば普通に手に入るもの。あるいは、庭で育てることのできるもの。

 タイトルが『薬になる野菜果物』となっているが、野菜と果物の線引きが曖昧であると私自身、自覚はしている。スイカが果物なら同じウリ科草本類のキュウリやカボチャ、トウガンも果物でいいのではないかと自分でも思う。学術的には、草本類に生る果実は野菜で、木本類に生る果実は果物ということになっているが、私の中では「ご飯のおかずになるものは野菜、甘くて、ご飯のおかずになりにくいものを果物」として分けている。
 ニガウリは完熟すると外皮は黄色くなり、種を含む内部は赤くなり、食べると甘い。その甘さは果物といってもいいのだが、一般的には未熟果を使用する。なので野菜。バナナやパパイアは野菜としても果物としても扱われる。バナナもパパイアも品種によるが、未熟なものは甘くないので野菜として、熟したものは甘いので果物として扱われる。

 薬になる野菜果物は多くあって、「こういうのが庭にあって、必要な時にすぐ手に入ると便利だな」と思って、「野菜は畑仕事をしないとできないが、果物なら放っておいても時期が来たら勝手に実が着くな」と、いつもの緩い考えで、先ずは果物から紹介。
 スーパーや八百屋に行けば普通に手に入る果物。あるいは、庭で育てることのできる果物で、栄養価が高く、薬草を紹介する書籍に載っていたものから私が選んだのは、
 アセロラ、イチゴ、イチジク、オリーブ、カキ、キウイ、グヮバ、ザクロ、シークヮーサー、シマグワ、スイカ、バナナ、パパイア、ビワ、ブドウ、マンゴー、レイシなど。
 これらの内、(沖縄で)栽培しやすいものはアセロラ、グヮバ、ザクロ、シークヮーサー、バナナ、パパイア、ビワ、レイシなどがあり、アセロラ、グヮバ、ザクロ、シークヮーサー、ビワなどは民家の庭でよく見られ、よく結実する。ただ、アセロラは小鳥に食害されやすい。バナナ、パパイアは台風に弱い。レイシは高木になるので剪定管理が必要などといった弱点もある。それはおいといて、これらを果実として生食すると、

 アセロラはビタミンCが豊富で、風邪予防・美肌に効果がある。
     
 グヮバはビタミン、ミネラルが豊富で滋養保健に良い。
     
 ザクロは摂取した場合の効能は不明、ただ、果汁が皮膚病に効く。
     
 シークヮーサーはアセロラに同じ。
     
 バナナは滋養保健・便秘に効果がある。
     
 パパイアは滋養保健に良く、乳の出が良くなる。
     
 ビワは疲労回復に良い。
     
 レイシは滋養保健に良く、病後の回復に効く。
     
 これらの中にはまた、食べる以外の方法でその他の効能もある。例えば、グヮバとビワはお茶としても有名で、いずれもその葉を乾燥させて煎じて服用すれば、グヮバは糖尿病・下痢止め・肩痛に効き、ビワは健胃・下痢止めになる。
 その他、ザクロの果皮を乾燥させ、それを煎じた液はうがい薬となり扁桃炎・咳止めに効く。シークヮーサーの果皮は入浴剤として肩凝り・腰痛などに効き、煎じて飲めば咳止め・健胃になる。バナナの葉は止血に使え、パパイアの果汁は胃痛、下痢止めに効く。
 家に庭があればこういった果樹を植えておいて、食べて楽しみ、お茶にして楽しみ、皮膚病にも使え、健康になる。オバー(お婆さん)がバナナの葉でケガした孫の手当てをしている日向の縁側、などといった古き良き時代の沖縄の民家の風景が思い浮かぶ。

 記:2019.2.6 ガジ丸 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄薬草のききめ』多和田真淳著・発行
 『身近な薬草活用手帖』寺林進監修、株式会社誠文堂新光社発行
 『食べる野草と薬草』川原勝征著、株式会社南方新社発行
 『琉球薬草誌』下地清吉著、琉球書房発行
 『入門沖縄の薬草』吉川敏男著、ニライ社発行
 『薬用植物大事典』田中孝治著、社団法人家の光協会発行
 『薬になる植物図鑑』増田和夫監修、柏書房株式会社発行
 『沖縄食材図鑑』田崎聡著、有限会社楽園計画発行
 『うちなーの伝統野菜と食材』沖縄県中部農業改良普及センター発行
 『おきなわ野の薬草ガイド』大滝百合子著、有限会社ボーダーインク発行
 『ありんくりんぬちぐすい』金城勇徳著、株式会社週間レキオ社


ニシキヒロハマキモドキ

2019年02月04日 | 動物:昆虫-鱗翅目(チョウ・ガ)

 判りやすい蛾

 昆虫の中には「よく似ている亜種」があり、「雄雌で姿に違い」があり、同じ種同じ性でも個体変異があったりする。自分の撮った写真と図鑑の写真を見比べて「これはこれである」とスッキリするのもあるが、「これはこれに似ているけど、ちょっと違う」というのもたまにあって、「これだ」とすっきりできないものが多くある。そんな中、
 今回紹介するニシキヒロハマキモドキは、「これはこれである」とスッキリ判断できたものの1つ。私が参考にしている『沖縄昆虫野外観察図鑑』にはこの種に似ている種は他に無かった。スッキリ判断できたのはしかも、私がまだ昆虫素人の12年前だった。
 本種の写真を撮ったのは2006年11月11日、土曜日の午後、浦添大公園で。しかも、写真のものがそれであるというのも程なく判明している。それが何で12年間も放っておかれたのかというと、写真が少しボケていたから。その内、ボケていない写真が撮れるであろうと思っていたから。12年も経って、多少はカメラの腕前も上がって、今ならボケない写真も撮れるはず。なのだが、12年経ってもそれ以降本種に出会っていない。あるいは、気付いていない。私の頭がボケて注意力が弱っているのかもしれない。

 ちなみに、「まだ昆虫素人の12年前」と上述したが、「今は玄人なの?」と問われると、周りの友人たちに比べれば昆虫に対する知識は多いかもしれないが、昆虫を学問として学んでいるわけではないので、「はい、玄人です」とは言い難い。でも、「まだ素人です」というのも悔しいので、「毛が2、3本生えた程度です」と言うことによう。
 
 ニシキヒロハマキモドキ(錦ひろ葉巻擬き):鱗翅目の昆虫
 ヒロハマキモドキガ科 屋久島、沖縄島、石垣島に分布 方言名:不詳
 名前の由来は資料が無く不明。『沖縄昆虫野外観察図鑑』に「個々の鱗粉の先端部には白色点があり、横線の輝きとあいまって美しい」とあり、そこからニシキ(錦)だと思われる。ちなみに錦は「金糸・銀糸など種々の色糸を用いて華やかな文様を織り出した絹織物」(明鏡国語辞典)のこと。ハマキムシ(葉捲虫)が広辞苑にあり、「植物の葉を巻いてその中にすみ、これを食害する昆虫、特にチョウ目ハマキガ科の蛾の幼虫の総称」とのこと。ハマキモドキガ科はそのハマキガ科に似ているのでモドキ(擬き)がついているのであろう。ヒロについては想像が及ばず漢字も思いつかない。本種はごく小さく(前翅長6~7ミリ)、体は細い。広という字は充てられない。他に思い付く漢字もない。
 「八重山のいくつかの島にはヤエヤマヒロハマキモドキという近似種がある」(沖縄昆虫野外観察図鑑)とのことだが、文献に写真が無く両者の違いは不明。私の写真は沖縄島浦添市で撮ったもの。
 前翅長6~7ミリ、成虫の出現は4~10月。食樹はガジュマル。

 記:ガジ丸 2019.2.2 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行
 『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行
 『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田春夫、他著、株式会社南方新社社発行
 『原色昆虫大図鑑』井上寛・岡野磨瑳郎・白木隆他著、株式会社北隆館発行