アメリカが2000億ドル(22兆円)相当の中国からの輸入品の関税を10%から25%に引き上げた。
アメリカの対中関税は昨年の7月以降2回にわたって500億ドル相当の輸入品に対して25%の関税を設け、関税協議の結果によっては今回発動した関税措置を採るとしていたものである。米中の関税協議は中国が譲歩する形で決着すると観られていたが、アメリカが協議に核心と位置付けていた知的財産権(外国企業の技術移転強要)保護と為替の国家管理体制の改善を、協議の最終局面で中国が拒否に転じたことから今回の事態となったものと理解している。更にトランプ大統領は全ての中国製品に25%の関税を課すための作業に着手したことも表明しており、全面戦争の様相を呈してきた。中国が協議の最終局面で協議決裂さえ予想される態度に転じた裏側には、北朝鮮に非核化交渉を決裂させるとともに弾道ミサイルを発射させ、韓国に北への食糧支援をちらつかさせ、イランやベネズエラに火の手を上げさせるという、衛星国あるいは影響力を持つ国を動かすことでアメリカの譲歩を引き出して関税協議を有利に妥結できるという計算・思惑があったのではないだろうか。しかしながら、全ての事象を分析した上でアメリカが今回の関税措置を発動したことは、中国がEU諸国の取り込みに成果を見せてG7の一角(イタリア)も中国経済に浸食されたことに加えてアメリカに対抗し得る軍事力を完成して、世界を2分しようという中国の野望を挫くためには対中全面経済戦争も辞さない不退転の決意を示す必要があったためと考える。
日本の言論・経済界は、トランプ大統領の”アメリカンファースト”と”保護貿易主義”に対して熱心に批判するが、米中関税戦争について「尖閣諸島に直接的な脅威を受けている日本の取るべき対中国姿勢」にまで踏み込んで考察する意見は少ないように思われる。我々の知り得ないレベルでは冷静に分析されて政府に進言・提案されているのであろうが、政府も観測気球として方向性の一端を明らかにして、国意の収斂・結束を図るべきではないだろうか。今後、米中関税戦争の余波は確実に拡大するものと思われるが、このままでは、ガソリンや食材の値上がりにのみ国民の目が向いて、黄色いベストデモ発生の可能性すら予想されるところである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます