トヨタ自動車が、技能職の採用増を決定したそうである。
生産ライン従事者は、1つの工程をマニュアル通りにやればすむので、比較的短期間の教育で養成ができると思う。しかしながら、試作車の組み立てや、手作り高級車の生産の現場では、1人の工員が複数の作業を行わなければならないため、熟練者の育成には長い教育と実習が必要となってくる。そんな中にあって特に重要視されるのが、徒弟(的)教育であると考える。徒弟制度と云えば、昔の丁稚奉公を思い浮かべる人が多いと思うが、技術伝承のためには現在にあっても必要不可欠の要素である。徒弟教育には技術の伝承のみならず、帰属意識や製品への愛着度を向上させる側面もあることからトヨタにおいても見直しが図られたものと思う。現在は世を挙げて「マニュアル化」の時代であり、事故の度にマニュアルの存否と必要性が問われるが、マニュアル化は品質の均一化には有効であっても、革新的な技術開発や手法は生み出さないとともに、マニュアルに記載されていない想定外の事象には無価値である。熟練した製造者や修理者にとっては、使命感と五感を刺激する臨場感が大事であり、おそらくトヨタの求める熟練技能者はマニュアルを与えられないのでないかと思う。学究の場でも『恩師』の話をよく聞くが、師と仰いだ人物の意志と姿勢を継承する徒弟制と云えるのではないだろうか。
世を挙げての「マニュアル重視の風潮」を再考すべき時期ではないだろうか。
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