昨日、原油のあれこれを勉強した過程で”バレル(樽)単位”に遭遇し、度量衡について改めて勉強した。
田舎で育った自分は、幼児期には学校ではメートル法、実生活では周囲の大人社会に合わせた尺貫法を使用することに痛痒を感じることなく生活していた。大相撲のラジオ実況で「栃錦」は身長5尺9寸、体重30貫と紹介されていた。では、日本古来の尺貫法とメートル法はどのような経過を辿って現在の度量衡に行き着いたのだろうか。1867年に大政奉還、1875年(明治8年)メートル条約成立(日本未加入)、1886年(明治19年)メートル条約加盟、1891年(明治24年)度量衡法成立(メートル法と尺貫法の併用)、1951(昭和26年)年計量法成立(一部を除き尺貫法廃止)、1966年(昭和41年)メートル法が完全実施されて数年のうちに尺貫法は社会から姿を消してしまった。尤も宮大工や和裁の世界では現在も尺貫法が使用されているそうであるが、わずか数年で度量衡を一変したことは世界では稀有の例であるらしい。一方アメリカを例にとると、依然としてヤード・ポンドが幅を利かせており、メートル法の完全実施を法制化する試みも繰り返し為されているが、ヤード・ポンドで作られた基準が既に国際基準となっているものがあることに加えアングロサクソン絶対主義(?)の故か、メートル条約加盟国でありながら完全実施には至っていないようである。冒頭の”バレル”単位もその一つで、かってアメリカで原油を運ぶ際に樽詰めで運搬したことが由来とされている。ちなみに石油用のバレルは42米液量ガロン・約159リットルであり、石油用のバレルとされているのは、バレルには石油用の他、ワイン用、ウイスキー用等、多くのバレルがあることによるらしい。バレルは商取引の標準として定着しているために今後とも変更されることは無いものと思われるので、報道記事は頭の中で換算しながら読むしかないと観念した。以下Wikipediaの引用であるが『(アメリカでは)異なる2つの単位系の使用が、1998年の火星探査機マーズ・クライメイト・オービターの喪失の原因となった。NASAは、契約の際にメートル法の使用を指示した。 NASAや他の組織では、作業においてメートル法の単位を適用したが、下請け業者の1つのであるロッキード・マーティンは、開発チームに対してスラスターの動作データをニュートン秒ではなくポンド重秒で提供した。探査機は高度約150キロで火星を周回することを意図していたが、間違ったデータにより高度約57キロメートルまで降下してしまい、火星の大気中で燃焼した』。この様にアメリカも度量衡が重複して使用されることには危機感を持っており、統一の方向にあることは間違いのないところと思う。
台風の中心気圧をミリバール(mb)でなくヘクトパスカル(hPa)、周波数をサイクル(C/s)ではなくヘルツ(Hz)と呼ばれることでも身近に感じられるように、現在ではメートル法より一歩進んだSI単位が統一使用されている。しかしながら「0.2グラムのダイヤモンド」というよりも、「1カラットのダイヤ」の方がイメージし易く、定着しているので、全ての度量衡を統一することは中々に難しい問題と思われるが、小林一茶の名句『正月は 冥土の旅の 一里塚』が理解されない時代は確実に来ると思う。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます