ニカラグワが中国との国交を回復し、台湾と断交した。
ニカラグワは1985年に中国と国交を樹立したが、90年に中国と断交して台湾と外交関係を樹立したものの、3転回帰して中国を選択(軍門に下った)した。
中国との国交回復は、オルテガ大統領の不正選挙に対する欧米の経済制裁強化に反発したものであるが、ニカラグワが台湾から医療や農業などに多額の経済協力や供与を受けてきたこともあって、一部には楽観視する向きもあったものの、11月に米国主導の米州機構(OAS)を離脱したことからある程度予測されていた。
これで、台湾と国交を持つ国は14カ国となり、その多くを占める中南米諸国への波及拡大が懸念されている。
報道記事中に、ニカラグワ運河(第2パナマ運河)に関する記述があった。自分は運河計画は中止されたと理解していたが、計画自体は大統領の机上に残っていたものであろうか。というわけで、ニカラグワ運河の概要と現状を勉強した。
運河自体は、太平洋側のブリト~ニカラグア湖~新建設の人工湖~カリブ海のプンタ・ゴルダに至る、総延長259.4km(パナマ運河の3.5倍)、最小幅:230m、最小水深:26mであり、40万㌧の超巨大貨物船(ULBC:長さ365m、幅65m、喫水23.5m)の通行が可能とされている。
建設計画の推移を年表にまとめると、
2013年 オルテガ政権が中国政府と関係があると見られる香港系企業(ニカラグワ運河開発投資会社:HKND)に新運河の計画・建設・運営を認める。
2014年 着工式典開催。2019年に完成予定と発表(予算400億㌦)
2015年 ニカラグア政府が運河建設計画の環境社会影響評価を承認(予算500億㌦に膨張)
2018年 中止報道。HKNDの本社事務所が閉鎖される。 となっている。
しかしながら、HKNDへの毎年の多額の資金援助と運河付属のインフラ整備(港湾・空港・道路・鉄道)の権利を認めた法律は廃止されていないため、運河建設が中止されたとしてもHKND(中国)がこの権利を行使する可能性が指摘されている。更には、運河開通後50年間の運営権(さらに50年間の延長可能)をHKNDに与える契約も残されているので、HKND背後にある人民解放軍や中国共産党を考えれば、事実上100年間「中国の租借地」になってしまうともされている。
ちなみに、2015年での運河建設予算規模500億㌦はニカラグワの名目GDP126億㌦(2020年世界銀行)の4倍に達するもので、着工後に大幅に経費を釣り上げる中国企業の常套手段を考えれば、ニカラグワがデフォルトに陥ることは確実であり、既に2014年の計画以降にオルテガ政権が中国に多額の負債を抱えているであろうことも疑いのないところと思える。
また、ニカラグワ運河の採算性についても懐疑的な予測が多く、加えてパナマ運河の拡張工事によって通行可能船舶数の増加や通行可能船舶の大型化が実現したために、当初見積もり以上に採算性は危ぶまれている。また、既に中国はパナマ運河に近いマルガリータ港の運営権を99年間手に入れているために、ニカラグア運河整備の重要性は低下しているともされているが、債務漬けには絶好の材料であるので、計画を手放すことは無いように思える。
ニカラグワ運河について書きながら、40年前に初めてパナマ運河を通行したことを思い出した。通行時間の予測コンテストが有り、淡水のガツン湖を航行したために海水管内の貝が死滅して、貝殻の掃除に手を取られたことなど懐かしんでいる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます