学内に福祉施設
キャンパス内の福祉施設でボランティア活動に取り組む学生たち(2月3日、栃木県大田原市の大田原キャンパスで) 那須連山が遠くにそびえ、空気は冷たく澄みきっていた。2月上旬、栃木県大田原市にある国際医療福祉大キャンパス。自然豊かな環境の中、医療や福祉への道を目指して過ごす学生たちを訪ねた。
「こんにちは。絵を描いていたんですか?」。大学内にある身体障害者のデイサービスセンター。エプロン姿の学生たちが、利用者にやさしく声をかけていた。約160人が登録する学内最大のボランティアサークル「かざはな」のメンバーたちだ。
車いすの障害者とキャンパスを散歩するボランティアの学生たち(同)=ともに三浦邦彦撮影 同大はボランティアが盛んで、約4000人の学生のうち、延べ800人超がボランティアサークルに所属する。学生の医療や福祉への意欲が強いうえ、学内に高齢者や身体障害者などの施設が七つあることや、大学がボランティアセンターを設置して活動を支援するなど環境が整っている。
「初めは利用者と話していると緊張したが、続けるうちに笑顔を見せてくれた。やっててよかったと感じる」。かざはな代表で作業療法学科2年の植田悠さん(20)。利用者の上野真理子さん(56)は「利用者ばかりだと話題がいつも同じなので、来てくれると話も広がる」とうれしそうだ。
独自にボランティアをする車いすの学生にも出会った。医療福祉学科3年の大蔵拓也さん(25)。施設の利用者の車いすを掃除したり、ハイチ大地震では学内で募金活動を行ったりした。このほか、4年前から休みを利用して車いすでの日本縦断に挑戦中。「歩くことで同じ障害の人に勇気を与えたい」と元気だ。
利用者との関係がうまく作れず、ボランティアをやめる学生もいるというが、自然体で取り組む姿が印象的だった。「学生生活の中に施設が当たり前にあり、顔を合わせることも珍しくない。利用者との関係を自然に作れる」と大蔵さん。そんなことが一つの要因のようだ。
「チーム医療」教育
医師以外のほぼすべての専門職を育てる同大ならではの特色が「チーム医療」の教育だ。医師や看護師などが協力して治療にあたる考えだが、患者が治療後も豊かな生活を送れるよう、関連職種の連携はますます重要になっている。
2年生では講義に加え、異なる学科の学生らが10人前後のグループになり、想定した患者についてどのような治療やケアが望ましいか討議して発表する「連携ワーク」も行う。昨年10月には初めての発表会を開いたばかりだ。
「チーム医療を構成するメンバーすべてを育成しており、学生のうちに他の専門職の知識や仕事を知ることができる。技術はもちろん、患者を家族と思う慈恵の心の大切さも教えていきたい」と、医師でもある北島政樹学長は話す。
「みんなあったかい人ばかり」。ボランティアをしていた十数人の学生たちに「大学の好きなところ」を聞いた時、一人の女子学生がうれしそうに言った。大学が掲げる「共に生きる社会」の実現。学生たちにその理念が息づいているような感じがした。
(名倉透浩)
〈沿革〉
1995年に開学。栃木県大田原市の本校のほか、神奈川県小田原市、福岡市、福岡県大川市にキャンパスがある。保健医療学部、医療福祉学部など計6学部15学科体制で、大学院もある。学生は計約5300人。保健師、看護師、理学療法士、言語聴覚士、社会福祉士などの国家資格取得を目指して学んでいる。付属病院などの関連施設が全国各地にあり、学生の実習先は充実している。
(2010年4月6日 読売新聞)
キャンパス内の福祉施設でボランティア活動に取り組む学生たち(2月3日、栃木県大田原市の大田原キャンパスで) 那須連山が遠くにそびえ、空気は冷たく澄みきっていた。2月上旬、栃木県大田原市にある国際医療福祉大キャンパス。自然豊かな環境の中、医療や福祉への道を目指して過ごす学生たちを訪ねた。
「こんにちは。絵を描いていたんですか?」。大学内にある身体障害者のデイサービスセンター。エプロン姿の学生たちが、利用者にやさしく声をかけていた。約160人が登録する学内最大のボランティアサークル「かざはな」のメンバーたちだ。
車いすの障害者とキャンパスを散歩するボランティアの学生たち(同)=ともに三浦邦彦撮影 同大はボランティアが盛んで、約4000人の学生のうち、延べ800人超がボランティアサークルに所属する。学生の医療や福祉への意欲が強いうえ、学内に高齢者や身体障害者などの施設が七つあることや、大学がボランティアセンターを設置して活動を支援するなど環境が整っている。
「初めは利用者と話していると緊張したが、続けるうちに笑顔を見せてくれた。やっててよかったと感じる」。かざはな代表で作業療法学科2年の植田悠さん(20)。利用者の上野真理子さん(56)は「利用者ばかりだと話題がいつも同じなので、来てくれると話も広がる」とうれしそうだ。
独自にボランティアをする車いすの学生にも出会った。医療福祉学科3年の大蔵拓也さん(25)。施設の利用者の車いすを掃除したり、ハイチ大地震では学内で募金活動を行ったりした。このほか、4年前から休みを利用して車いすでの日本縦断に挑戦中。「歩くことで同じ障害の人に勇気を与えたい」と元気だ。
利用者との関係がうまく作れず、ボランティアをやめる学生もいるというが、自然体で取り組む姿が印象的だった。「学生生活の中に施設が当たり前にあり、顔を合わせることも珍しくない。利用者との関係を自然に作れる」と大蔵さん。そんなことが一つの要因のようだ。
「チーム医療」教育
医師以外のほぼすべての専門職を育てる同大ならではの特色が「チーム医療」の教育だ。医師や看護師などが協力して治療にあたる考えだが、患者が治療後も豊かな生活を送れるよう、関連職種の連携はますます重要になっている。
2年生では講義に加え、異なる学科の学生らが10人前後のグループになり、想定した患者についてどのような治療やケアが望ましいか討議して発表する「連携ワーク」も行う。昨年10月には初めての発表会を開いたばかりだ。
「チーム医療を構成するメンバーすべてを育成しており、学生のうちに他の専門職の知識や仕事を知ることができる。技術はもちろん、患者を家族と思う慈恵の心の大切さも教えていきたい」と、医師でもある北島政樹学長は話す。
「みんなあったかい人ばかり」。ボランティアをしていた十数人の学生たちに「大学の好きなところ」を聞いた時、一人の女子学生がうれしそうに言った。大学が掲げる「共に生きる社会」の実現。学生たちにその理念が息づいているような感じがした。
(名倉透浩)
〈沿革〉
1995年に開学。栃木県大田原市の本校のほか、神奈川県小田原市、福岡市、福岡県大川市にキャンパスがある。保健医療学部、医療福祉学部など計6学部15学科体制で、大学院もある。学生は計約5300人。保健師、看護師、理学療法士、言語聴覚士、社会福祉士などの国家資格取得を目指して学んでいる。付属病院などの関連施設が全国各地にあり、学生の実習先は充実している。
(2010年4月6日 読売新聞)