◆名古屋市総合リハビリセンター・尋木佐一部長(59)
◇豊かな暮らし、誰もが 自立支援訴え30年
「第19回障害者週間記念事業・第12回身体障害者補助犬シンポジウム」が28日、宝塚市である。開催を前に、出演者や補助犬使用者ら障害者問題にかかわる人に話を聞き、共通テーマである「なくそう心の段差」に向けた思いなどを聞いた。
「誰もが事故や病気で障害者になりうる。障害を持っても豊かに暮らせるということをもっと実証していきたいですね」
シンポジウムでパネリストを務める名古屋市総合リハビリテーションセンターの自立支援部長、尋木佐一さん(59)は、30年以上、障害者の自立支援を続けてきた。今も障害者一人一人と向き合い、「何がしたいか」「何ができるか」をじっくりと話し合い、自立支援の方法や仕事を選ぶ手助けをしている。
福岡県で学生時代を送った1970年代。筑豊や夕張、水俣やカネミ油症事件の舞台となった北九州……。カメラを手に各地で公害の現場や閉山してゆく炭鉱で働く人々の姿を追い、仲間と写真集を自費出版した。
強く影響を受けたのは水俣病患者との出会い。普通の暮らしを奪われ、そこに置かれるしかない患者たちを目の当たりにし、思った。「障害者の人権の復権は、自立や社会参加抜きにはありえない」
大学を卒業し、県内の身体・知的障害者の授産施設で職能指導員に。障害者がプライバシーが確保されない6人部屋の寮で暮らし、施設から与えられた広告の印刷などをしていた。「施設に頼っているだけでは、自立した生活とはいえないのではないか」。少しでも社会参加できる道をと、公営住宅に住めるよう県と掛け合い、職業安定所に足を運んで障害者の希望と能力に合った職を探した。
89年にセンターへ。障害者雇用促進法の改正など法整備も進み、以前よりも障害者の就労状況は改善されつつあるという。しかし、一方で職場でいじめを受けたり、「できない」ことをとがめられ続け、離職したり心を病む例も後を絶たない。「差別の裏には健常者側のいびつなものの見方がある。それを変えるには、障害者の社会参加をもっと進める必要がある」と話す。
センターは04年、介助犬、聴導犬の相談・認定事業の指定法人になった。車椅子で暮らす宝塚市の木村佳友さん(50)のパートナー、エルモはセンターの介助犬認定第一号で、その際、認定審査委員長を務めた。「障害者は、人にものを頼むことにとても気兼ねします。その点、介助犬だから出来ることもある。精神的な支えとしても役割は大きい」。介助犬と出会って積極的にリハビリを始めた人もおり、介助犬に障害者自立の可能性を感じている。
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◇第19回障害者週間記念事業・第12回身体障害者補助犬シンポジウム
28日(日)午前10時~午後4時、宝塚市山本南2の市立東公民館(阪急宝塚線山本駅から南へ徒歩7分)。午前の部は、障害者によるギターや和太鼓の演奏など。午後は1時半からの介助犬デモンストレーションに続いて、補助犬シンポジウムや福田正人さんのミニコンサートなど。各団体の展示やバザーもある。入場無料。問い合わせは、市障害福祉課(0797・77・2077)。
毎日新聞 2010年11月25日 地方版
◇豊かな暮らし、誰もが 自立支援訴え30年
「第19回障害者週間記念事業・第12回身体障害者補助犬シンポジウム」が28日、宝塚市である。開催を前に、出演者や補助犬使用者ら障害者問題にかかわる人に話を聞き、共通テーマである「なくそう心の段差」に向けた思いなどを聞いた。
「誰もが事故や病気で障害者になりうる。障害を持っても豊かに暮らせるということをもっと実証していきたいですね」
シンポジウムでパネリストを務める名古屋市総合リハビリテーションセンターの自立支援部長、尋木佐一さん(59)は、30年以上、障害者の自立支援を続けてきた。今も障害者一人一人と向き合い、「何がしたいか」「何ができるか」をじっくりと話し合い、自立支援の方法や仕事を選ぶ手助けをしている。
福岡県で学生時代を送った1970年代。筑豊や夕張、水俣やカネミ油症事件の舞台となった北九州……。カメラを手に各地で公害の現場や閉山してゆく炭鉱で働く人々の姿を追い、仲間と写真集を自費出版した。
強く影響を受けたのは水俣病患者との出会い。普通の暮らしを奪われ、そこに置かれるしかない患者たちを目の当たりにし、思った。「障害者の人権の復権は、自立や社会参加抜きにはありえない」
大学を卒業し、県内の身体・知的障害者の授産施設で職能指導員に。障害者がプライバシーが確保されない6人部屋の寮で暮らし、施設から与えられた広告の印刷などをしていた。「施設に頼っているだけでは、自立した生活とはいえないのではないか」。少しでも社会参加できる道をと、公営住宅に住めるよう県と掛け合い、職業安定所に足を運んで障害者の希望と能力に合った職を探した。
89年にセンターへ。障害者雇用促進法の改正など法整備も進み、以前よりも障害者の就労状況は改善されつつあるという。しかし、一方で職場でいじめを受けたり、「できない」ことをとがめられ続け、離職したり心を病む例も後を絶たない。「差別の裏には健常者側のいびつなものの見方がある。それを変えるには、障害者の社会参加をもっと進める必要がある」と話す。
センターは04年、介助犬、聴導犬の相談・認定事業の指定法人になった。車椅子で暮らす宝塚市の木村佳友さん(50)のパートナー、エルモはセンターの介助犬認定第一号で、その際、認定審査委員長を務めた。「障害者は、人にものを頼むことにとても気兼ねします。その点、介助犬だから出来ることもある。精神的な支えとしても役割は大きい」。介助犬と出会って積極的にリハビリを始めた人もおり、介助犬に障害者自立の可能性を感じている。
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◇第19回障害者週間記念事業・第12回身体障害者補助犬シンポジウム
28日(日)午前10時~午後4時、宝塚市山本南2の市立東公民館(阪急宝塚線山本駅から南へ徒歩7分)。午前の部は、障害者によるギターや和太鼓の演奏など。午後は1時半からの介助犬デモンストレーションに続いて、補助犬シンポジウムや福田正人さんのミニコンサートなど。各団体の展示やバザーもある。入場無料。問い合わせは、市障害福祉課(0797・77・2077)。
毎日新聞 2010年11月25日 地方版