◇「互いが歩み寄りを」
「まつもっちゃん、調子はどげんね」。益城町にある第三セクターのパソコンプログラム開発会社「熊本ソフトウェア」。足立国功社長(65)が、社員で車椅子生活の松本克実さん(50)=南阿蘇村=に親しく声を掛ける。
特に松本さんが入社した94年は、どんなに忙しくても毎日30分以上、足立さんは松本さんの話に耳を傾けた。職場は働きやすい環境か、配慮してほしいことは何か。「障害者のよりよい働き方」を絶えず模索する。
足立さんが経営にかかわった90年、社員は健常者だけだった。当時、知人に頼まれ障害者も出品したCGデザインコンテストの審査員に。自由に体を動かしにくい人たちが、手先から鮮やかで細かな図形などを組み合わせた作品を生み出すことに感銘を受けた。骨折で入院して障害のある人がリハビリに励む姿を見たこともあり、「彼らの仕事の場を増やせたら」と障害者雇用を考えるようになった。
そのころ、知人の紹介で頸椎(けいつい)に障害のある松本さんと知り合った。勤勉な人柄にほれ込み、足立さんは採用を決めた。松本さんの意見を聴いて新社屋をバリアフリーに改造。車椅子から乗り移りやすいよう便座が高い位置にあるトイレを設置し、ケーブルを床下に収納してつまずきにくいよう改善した。
従業員26人の同社は、法的には障害者の雇用は求められていないが、最大4人を雇用した時期もあった。県の委託事業で毎年、障害者の研修生10人も受け入れる。
検討中の条例案では、障害者から雇用環境の改善などで申し出があれば、「相談員」が職場との仲介をする。だが松本さんは「職場内の問題を当事者同士でとことんまで話し合わず、部外の相談員が解決するのは難しいのではないか」という思いが消えない。
条例案の検討委員でもある足立さんは「法定雇用率の数字だけでなく、障害を理由に健常者とは異なる待遇を認めないと記している」と意義を認める。一方で「ただ雇用主に一方的に負担を求めたり、雇用主も障害者への配慮を全くしないのではいけない。経営者と障害者のお互いが歩みよるべきところもある」と話す。
毎日新聞 2010年12月2日 地方版
「まつもっちゃん、調子はどげんね」。益城町にある第三セクターのパソコンプログラム開発会社「熊本ソフトウェア」。足立国功社長(65)が、社員で車椅子生活の松本克実さん(50)=南阿蘇村=に親しく声を掛ける。
特に松本さんが入社した94年は、どんなに忙しくても毎日30分以上、足立さんは松本さんの話に耳を傾けた。職場は働きやすい環境か、配慮してほしいことは何か。「障害者のよりよい働き方」を絶えず模索する。
足立さんが経営にかかわった90年、社員は健常者だけだった。当時、知人に頼まれ障害者も出品したCGデザインコンテストの審査員に。自由に体を動かしにくい人たちが、手先から鮮やかで細かな図形などを組み合わせた作品を生み出すことに感銘を受けた。骨折で入院して障害のある人がリハビリに励む姿を見たこともあり、「彼らの仕事の場を増やせたら」と障害者雇用を考えるようになった。
そのころ、知人の紹介で頸椎(けいつい)に障害のある松本さんと知り合った。勤勉な人柄にほれ込み、足立さんは採用を決めた。松本さんの意見を聴いて新社屋をバリアフリーに改造。車椅子から乗り移りやすいよう便座が高い位置にあるトイレを設置し、ケーブルを床下に収納してつまずきにくいよう改善した。
従業員26人の同社は、法的には障害者の雇用は求められていないが、最大4人を雇用した時期もあった。県の委託事業で毎年、障害者の研修生10人も受け入れる。
検討中の条例案では、障害者から雇用環境の改善などで申し出があれば、「相談員」が職場との仲介をする。だが松本さんは「職場内の問題を当事者同士でとことんまで話し合わず、部外の相談員が解決するのは難しいのではないか」という思いが消えない。
条例案の検討委員でもある足立さんは「法定雇用率の数字だけでなく、障害を理由に健常者とは異なる待遇を認めないと記している」と意義を認める。一方で「ただ雇用主に一方的に負担を求めたり、雇用主も障害者への配慮を全くしないのではいけない。経営者と障害者のお互いが歩みよるべきところもある」と話す。
毎日新聞 2010年12月2日 地方版