携帯電話からの119番通報が増え、救急出動に生かそうという動きが広がっている。携帯を利用した場合、発信者の位置を瞬時に割り出すシステムが全国の約4割の消防本部で整備された。救急車や消防車の現場到着までの時間を短縮する狙いだ。総務省消防庁はさらに、聴覚障害などで会話の難しい人が通報に活用できるよう検討を始めた。
千葉県柏市と我孫子市でつくる「東葛消防指令センター」。携帯電話からの119番通報を受けるとパソコン画面の地図に「携」の文字が浮かび、通報者の位置を表示する。伏見弘専門監は「普段通らない場所で交通事故を起こしたような時は、自分がどこにいるのかうまく言えない。そんな時は位置情報から場所を絞り込める」と話す。
通報者は、事故などの場所や救急隊などが来る際の目標物を伝える必要がある。固定電話では番号から場所が判明するが、携帯電話では自分で説明するしかなかった。
位置情報の通知システムは、携帯電話会社の基地局から通報者の位置を割り出す。基地局だと半径数キロの円で示される場合もあるが、広い管内からの絞り込みに役立つ。市場の半数を占めるとされる全地球測位システム(GPS)機能がついた携帯電話だと、誤差がわずか15~20メートルの場合もあるという。
消防庁が2007年4月から運用を始め、今年4月時点で、全国802消防本部のうち4割余りにあたる347本部で導入された。
消防庁によると全国の消防本部にあった09年の119番通報は約806万件。このうち携帯電話からは約220万件で約27%を占める。06年の約18%から年々増えている。
このため、消防庁は聴覚や言語に障害がある人やお年寄りが携帯電話を使って、言葉を交わさず、全国どこからでも119番通報できるシステムづくりの検討も始めた。
現在、こうした人の最も一般的な通報手段はファクスで、全国の約8割の消防本部で受け付けている。しかし、地元の消防本部への事前登録が必要で、登録者は聴覚や言語機能が不自由な人の約4%にとどまるという。また、旅行などほかの地域に行った場合は、現地の消防本部に直接通報できない。
残り約2割の消防本部では「メール119番」を導入している。こちらも事前登録をしてもらったうえ、指定したアドレスにメールを送る仕組みだ。登録した消防本部の担当地域内での出動になる。
検討中のシステムは、携帯電話の位置情報を使って、障害者らからの出動要請メールが、全国どこにいても最寄りの消防本部に届く仕組みだ。テレビ電話を通じての手話のやりとりなども議論されている。
朝日新聞