県が制定の準備を進めている「障がい者への差別をなくす条例」について、蒲島郁夫知事は8日、当初予定していた来年2月県議会での提案を、6月議会に延期することを明らかにした。施行予定は12年4月で変更しない。溝口幸治議員(自民)の質問に答えた。
条例は、行政や障害者団体などでつくる検討委が9カ月にわたり内容を吟味。障害の定義を、医学的な診断だけでなく「日常生活、社会生活に相当な制限を受ける状態」と社会的にもとらえるなど、他県にもない新しい考え方を入れた。11月に検討委の素案が完成し、年内に意見公募を始める予定だった。
しかし素案作成後の事業者向け説明会で「条例の内容を具体例で示してほしい」「どこに相談すればいいのか」など疑問や不安を訴える意見が続出した。12月には、経済団体から条例や運用の周知を求める要望書も提出されたことなどから、条例成立前の周知期間を設けるため、提案を遅らせることにした。
蒲島知事は答弁で「丁寧な説明をし意見を聴いた上で提案することが大切で、十分周知を図って施行を目指す」と述べた。
年明けから県内の地域振興局や市町村、事業者向けの説明会をさらに開き、意見公募は2月に実施する。県障がい者支援対策総室は「検討委の決定は重く、内容の後退は考えていない」としている。
提案が来年6月議会に先送りされたことについて、「条例をつくる会」メンバーで条例検討委員の日隈辰彦さんは「非常に残念。4月の県議選後で、これまで熱心に勉強してくださった厚生常任委員が変わってしまうのも成立に向けて不安な点だ。障害の定義など全国的にも画期的な内容は後退させてほしくない」と話した。その上で「つくる会でも事業者の皆さんが言う『差別の具体例の分かりにくさ』などを解消するため、広報をしていきたい」と述べた。
毎日新聞 2010年12月9日 地方版