7月にさいたま地裁で開かれた傷害致死事件の裁判員裁判で、取り調べの録音録画記録が、供述調書と同様に犯罪事実を直接立証するための証拠として採用され、これらを根拠に有罪判決が言い渡されていたことが15日、分かった。録画記録はこれまで供述調書の任意性の立証などに使われており、最高検によると、有罪の直接の証拠とされた初めてのケースという。
記録が証拠採用されたのは、障害を持つ長男を暴行し死亡させたとして、父親が傷害致死罪に問われた裁判員裁判。一部が録画された取り調べで容疑を認めたが、公判では暴行を否認した。検察側は父親の行為が暴行に当たることを立証するため、録画DVDを証拠として提出。被告人質問の後、裁判員の評議を経て採用された。
法廷では、父親が身ぶりを交えて当時の状況を再現する場面や、検察官が供述の変化を確認する場面など約3時間分が上映された。地裁はDVDなどを根拠に、「捜査段階の供述は信用できる」として有罪を言い渡し、判決はその後確定した。
検察関係者によると、犯罪事実の立証のためにDVDを証拠申請した例はあったが、裁判所に却下されたり、申請を取り下げたりして、ほとんど採用されていない。長時間の録画記録再生が裁判員に負担をかけることや、法廷での尋問を重視する公判中心主義に反することなどから、裁判所が採用に消極的なことが背景にあるとみられる。
検察関係者は「調書と違い、映像は被告の言い分が正しいかどうか見るだけで判断できる。任意性をめぐる争いもなくなる」と意義を強調する。一方、裁判員裁判経験のある弁護士は「録画は冤罪(えんざい)の防止にもなるが、有罪立証に使われると検察に有利な部分が録画・上映され、裁判員の印象に残ってしまう」と危惧する。
最高検は7月、取り調べ録画の検証結果を発表した際に、録画記録を有罪立証に積極活用していく意向を示していた。
[時事通信社]
記事提供:時事通信社- 2012年09月15日
記録が証拠採用されたのは、障害を持つ長男を暴行し死亡させたとして、父親が傷害致死罪に問われた裁判員裁判。一部が録画された取り調べで容疑を認めたが、公判では暴行を否認した。検察側は父親の行為が暴行に当たることを立証するため、録画DVDを証拠として提出。被告人質問の後、裁判員の評議を経て採用された。
法廷では、父親が身ぶりを交えて当時の状況を再現する場面や、検察官が供述の変化を確認する場面など約3時間分が上映された。地裁はDVDなどを根拠に、「捜査段階の供述は信用できる」として有罪を言い渡し、判決はその後確定した。
検察関係者によると、犯罪事実の立証のためにDVDを証拠申請した例はあったが、裁判所に却下されたり、申請を取り下げたりして、ほとんど採用されていない。長時間の録画記録再生が裁判員に負担をかけることや、法廷での尋問を重視する公判中心主義に反することなどから、裁判所が採用に消極的なことが背景にあるとみられる。
検察関係者は「調書と違い、映像は被告の言い分が正しいかどうか見るだけで判断できる。任意性をめぐる争いもなくなる」と意義を強調する。一方、裁判員裁判経験のある弁護士は「録画は冤罪(えんざい)の防止にもなるが、有罪立証に使われると検察に有利な部分が録画・上映され、裁判員の印象に残ってしまう」と危惧する。
最高検は7月、取り調べ録画の検証結果を発表した際に、録画記録を有罪立証に積極活用していく意向を示していた。
[時事通信社]
記事提供:時事通信社- 2012年09月15日