警察庁が特定の持病がある人に対する免許制度を見直し、病状の虚偽申告に罰則を設ける方針を決めた。
昨年、栃木県で起きたクレーン車の暴走事故では小学生6人が犠牲になった。運転手のてんかん発作が原因だった。4月に京都市で8人が死亡した事故でも、運転していた男にてんかんの持病があった。2人は病状を申告していなかった。
てんかんに限らない。法令や医師の指導を守らず、認知症で意識を失った、低血糖症で意識障害に陥った、といった原因の事故が各地で起きている。適正な申告を促す対策は必要だ。
ただ、規制を強化するだけで十分な抑止効果を得られるとは思えない。免許がなくても生活や就労に支障を来さない支援制度、公共交通網の整備など、多面的な取り組みが求められる。
警察庁は罰則のほか、医師が運転は危険だと判断した患者の情報を、任意で公安委員会に届け出る仕組みも新設するとした。
現行の制度では、意識喪失、けいれん、まひなどの症状があれば、免許の取得・更新時に申告しなければならない。が、外見からは分からないため、実効性が乏しいとの指摘があった。
日本てんかん協会が「罰則の導入には慎重であるべきだ」との声明を出している。「虚偽申告者が罰則を受けてまで修正申告することは期待しにくく、むしろ病状を隠す結果になる」と主張。医師の届け出についても、患者との信頼関係が崩れれば、診療の後退を招くと心配する。
申告義務を知らない患者もいる。国はまず、道交法の規則や義務を患者本人だけでなく、家庭や職場にも周知してほしい。
偏見や差別が、患者が病気を隠す要因になっている。
正規の手続きで免許を取ったのに、運転業務から外されたり、退職を迫られたりする事例は多いという。例えば、てんかんは適切な治療で発作の7割を抑えられるといわれる。病気についての正しい理解を広めることも重要だ。
一部の自治体が実施している持病がある人への交通費の負担軽減策などを広めたい。車がなくても十分に暮らしていける環境を整えることは、高齢化が進む日本社会全体の課題といえる。
持病がある人が事故を起こす割合は、健康な人に比べ必ずしも高くない。病気の有無にかかわらず、ドライバー一人一人が自己管理を徹底すること。痛ましい事故を防ぐために肝心である。
信濃毎日新聞-10月26日(金)
昨年、栃木県で起きたクレーン車の暴走事故では小学生6人が犠牲になった。運転手のてんかん発作が原因だった。4月に京都市で8人が死亡した事故でも、運転していた男にてんかんの持病があった。2人は病状を申告していなかった。
てんかんに限らない。法令や医師の指導を守らず、認知症で意識を失った、低血糖症で意識障害に陥った、といった原因の事故が各地で起きている。適正な申告を促す対策は必要だ。
ただ、規制を強化するだけで十分な抑止効果を得られるとは思えない。免許がなくても生活や就労に支障を来さない支援制度、公共交通網の整備など、多面的な取り組みが求められる。
警察庁は罰則のほか、医師が運転は危険だと判断した患者の情報を、任意で公安委員会に届け出る仕組みも新設するとした。
現行の制度では、意識喪失、けいれん、まひなどの症状があれば、免許の取得・更新時に申告しなければならない。が、外見からは分からないため、実効性が乏しいとの指摘があった。
日本てんかん協会が「罰則の導入には慎重であるべきだ」との声明を出している。「虚偽申告者が罰則を受けてまで修正申告することは期待しにくく、むしろ病状を隠す結果になる」と主張。医師の届け出についても、患者との信頼関係が崩れれば、診療の後退を招くと心配する。
申告義務を知らない患者もいる。国はまず、道交法の規則や義務を患者本人だけでなく、家庭や職場にも周知してほしい。
偏見や差別が、患者が病気を隠す要因になっている。
正規の手続きで免許を取ったのに、運転業務から外されたり、退職を迫られたりする事例は多いという。例えば、てんかんは適切な治療で発作の7割を抑えられるといわれる。病気についての正しい理解を広めることも重要だ。
一部の自治体が実施している持病がある人への交通費の負担軽減策などを広めたい。車がなくても十分に暮らしていける環境を整えることは、高齢化が進む日本社会全体の課題といえる。
持病がある人が事故を起こす割合は、健康な人に比べ必ずしも高くない。病気の有無にかかわらず、ドライバー一人一人が自己管理を徹底すること。痛ましい事故を防ぐために肝心である。
信濃毎日新聞-10月26日(金)