長男の首をネクタイで絞めて死亡させたとして、傷害致死の罪に問われた福岡市南区の男性(62)に対する裁判員裁判で、福岡地裁は1日、無罪(求刑・懲役4年)を言い渡した。野島秀夫裁判長は「当時、ネクタイで首を絞めているという自覚はなく、長男の暴力を防いで身を守るために取り押さえたのも正当防衛としてやむを得なかった」と述べた。
男性は昨年9月10日夕、自宅で長男(当時25歳)の首をネクタイで絞めるなどの暴行を加え、窒息死させたとして起訴された。男性は正当防衛の成立を理由に無罪を主張した。
判決によると、長男には精神疾患があり、約2年前から男性を殴って骨折させたり、タクシーの無賃乗車で警察に保護されることが度々あった。事件当日は、外出しようとした長男を男性が肩をつかんで止めたところ、長男が抵抗して殴ってきたため、つかみ合いになり、男性は長男をソファにうつぶせの状態で押さえ付けた。
検察側は男性が直後に119番した時に「首を絞めた」と話したことから「意識して首を絞めた」と主張したが、判決は「男性は無我夢中で、長男のネクタイをつかんでいたことに気付かなかったとしても不合理ではない」と判断した。
更に、2人の体格や体力などを検討し「長男がソファに押し倒された後も抵抗している状況下で、押さえ付けて制圧しなければ、再び長男が加害行為に及ぶ恐れがあった」として正当防衛の成立を認めた。
福岡地検の玉置俊二・次席検事は「内容を精査の上、適切に対応したい」とコメントした。
◇「精神障害者抱える家庭、社会でどうすべきか」
無罪を言い渡された男性は判決後、ほっとした表情をみせた。報道陣の取材には「まだ気持ちが定まってないから……」とだけ答え、家族らに付き添われて裁判所を出た。弁護人の一人は「裁判員の方々がよく考えてくれた」と話した。
裁判員は補充裁判員を含め6人が記者会見に応じた。
30代の女性は「本当にこの人は法的な罰を受けなきゃいけないのだろうかと夜も眠ることができないぐらいに考えた」と打ち明けた。中年の男性は「精神障害者を抱える家庭の問題として、社会でどうするべきかを考えないといけない」。30代の男性は「人が人を裁くのは大変で重いと感じたが、市民の常識を裁判に生かせる、いい制度だと思った」と話した。
◇全面無罪が21件、一部無罪は16件−−裁判員裁判
毎日新聞 2013年02月02日 西部朝刊
男性は昨年9月10日夕、自宅で長男(当時25歳)の首をネクタイで絞めるなどの暴行を加え、窒息死させたとして起訴された。男性は正当防衛の成立を理由に無罪を主張した。
判決によると、長男には精神疾患があり、約2年前から男性を殴って骨折させたり、タクシーの無賃乗車で警察に保護されることが度々あった。事件当日は、外出しようとした長男を男性が肩をつかんで止めたところ、長男が抵抗して殴ってきたため、つかみ合いになり、男性は長男をソファにうつぶせの状態で押さえ付けた。
検察側は男性が直後に119番した時に「首を絞めた」と話したことから「意識して首を絞めた」と主張したが、判決は「男性は無我夢中で、長男のネクタイをつかんでいたことに気付かなかったとしても不合理ではない」と判断した。
更に、2人の体格や体力などを検討し「長男がソファに押し倒された後も抵抗している状況下で、押さえ付けて制圧しなければ、再び長男が加害行為に及ぶ恐れがあった」として正当防衛の成立を認めた。
福岡地検の玉置俊二・次席検事は「内容を精査の上、適切に対応したい」とコメントした。
◇「精神障害者抱える家庭、社会でどうすべきか」
無罪を言い渡された男性は判決後、ほっとした表情をみせた。報道陣の取材には「まだ気持ちが定まってないから……」とだけ答え、家族らに付き添われて裁判所を出た。弁護人の一人は「裁判員の方々がよく考えてくれた」と話した。
裁判員は補充裁判員を含め6人が記者会見に応じた。
30代の女性は「本当にこの人は法的な罰を受けなきゃいけないのだろうかと夜も眠ることができないぐらいに考えた」と打ち明けた。中年の男性は「精神障害者を抱える家庭の問題として、社会でどうするべきかを考えないといけない」。30代の男性は「人が人を裁くのは大変で重いと感じたが、市民の常識を裁判に生かせる、いい制度だと思った」と話した。
◇全面無罪が21件、一部無罪は16件−−裁判員裁判
毎日新聞 2013年02月02日 西部朝刊