アイマスクを着け、ボールに入った金属片の「シャラシャラ」という音を頼りに打ち合う卓球に似た競技「サウンドテーブルテニス(STT)」の全国レベルの競技会が今秋、秋田市で開かれる。それに先立ち、主催者は2日間で延べ200人のボランティアを募集している。【藤原章生】
大会は秋田県STTクラブが主催し、「こまち大会」と銘打っている。10月10、11日の2日間にわたり秋田市の県心身障害者総合福祉センターで開かれ、県内外から100人の選手が集まる。視覚障害者が中心となるため、誘導や競技審判、球拾いなどに選手と同数の支援者が必要だ。
秋田県STTクラブの佐々木達夫さん(65)は「私たち視覚障害者にとってはとても楽しみな機会です。学生ら若い人が積極的に参加してくれればありがたい」と呼びかける。
秋田市職員だった佐々木さんは30年前、脳腫瘍の手術で失明した。視神経を傷つけられたためだといい、前向きに生きようと思えるのに1年かかった。
「事前に医師から説明がないまま、突然真っ暗になり本当にショックでした。今も光は感じませんが、失明前の記憶は鮮明で、当時8歳と6歳だった娘たちの顔が夢によく現れます。普段は真っ暗ですが、どういう仕組みなのか、感情次第でピンク、緑、赤っぽく感じたりします」
佐々木さんは失明後、市の老人施設などに勤務する傍ら、盲導犬の普及に努めている。視覚障害者が気軽にできるスポーツとして、12年前からSTTを広めている。
「音が頼りなので『観戦者は拍手をしてはいけない』、『人により視野や光の感じ方が違うためアイマスク着用』など細かなルールはありますが、健常者も一度試してほしい」と話す。
ボランティアの応募は佐々木さん(電話018・845・6332)へ。
サウンドテーブルテニスの練習をする佐々木達夫さん(左)ら
毎日新聞 2015年04月30日 地方版