障害のある人も、ない人も一緒に取り組む障害者シンクロナイズド・スイミングの祭典「フェスティバル」が10日、京都市である。東海地方で唯一のチーム「名古屋ベルーガ」は18回連続の出場に向け、練習に励んでいる。
「顔を上げた時、いつも誰かがむせてるの。むせたらダメ~」
4月25日、名古屋市障害者スポーツセンターの室内プール。コーチの杉浦真代さんが身ぶりを交えて指導すると、真剣な表情のメンバーが一斉に笑った。約2時間の練習中、常に笑い声がプールに響く。
ベルーガの発足は1997年。シンクロの経験があった杉浦さんが東京で障害者シンクロを見たことがきっかけ。「足が使えなければ手を使えばいい。1人で立てなければ誰かが助ければいい。出来ないことなんて無いんだ」と衝撃を受け、「名古屋でも広めたい」と立ち上げた。
5年前に始めた会社員の高田秀一さん(31)は、脳性まひのため普段は杖をついて歩く。最初は、浮くこともできなかった。杉浦さんは「沈んだら沈んだまま。こっちが怖かった」と振り返る。
でも「出来ないかな」と聞くと、「やってみます」と言って練習を繰り返し、やり遂げてしまう。高田さんは昨年からソロの部に出場。「シンクロらしい動きがしたい」と、表現力を意識して練習を続ける。運動不足の解消が目的だったが、今では「シンクロは生活の一部」という。
河村浩美さんと娘の真由さんは2年ほど前から親子で通う。ダウン症の真由さんは音楽やダンスが大好き。「シンクロをしている」と言うと、「すごいね」と言われるのもうれしい。
今回はAKB48の「さよならクロール」に合わせ、経験の浅い人たちのチームで演技をする。真由さんは「楽しみ」と笑顔を見せ、浩美さんも「大会は良い目標。親にとっても表舞台です」と話す。
〈障害者シンクロ〉 1人の「ソロ」、2人の「デュエット」、4人以上の「チーム」など、それぞれ演技者の半数以上が障害者であれば、性別や年齢、障害の種類などに制限はない。フェスティバルは1992年に始まり、今年は21チーム、約270人が参加する。
ベルーガでは、メンバーやボランティアを募集している。問い合わせはホームページ(http://www7.plala.or.jp/nagoya_beluga/top.html)からメールで。
全国大会に向け練習を重ねるベルーガの選手たち=4月25日、名古屋市名東区の市障害者スポーツセンター
2015年5月9日 朝日新聞デジタル