県は本年度から、重い心身障害がある子どもや大人(重症心身障害児・者)で、たんの吸引など医療的ケアを必要とする人を自宅で介護する家族の負担軽減(レスパイトケア)に向けて、本格的な取り組みを始めた。家族が病気になった時などに障害児・者を一時的に預かる短期入所(ショートステイ)を実施する病院などを増やすため、医療機器などの購入費を助成。医療的ケアに従事するヘルパーの研修会を開催し、人材育成を進める。
県障がい者支援課によると、県内の重症心身障害児・者は約1300人。この中には、自宅で生活しながら、たんの吸引や人工呼吸器の管理、管を使った栄養注入(経管栄養)などの医療的ケアを受けている人が少なくない。
こうした人を介護する家族が急用や病気の際に利用する福祉サービスが、医療的ケアを受けられる「医療型短期入所」。ただ、県内で実施しているのは4月末時点で9カ所(熊本市2、合志市2、宇城市2、美里町1、芦北町1、苓北町1)の病院と診療所にとどまっており、家族からは「施設数が少ないため予約が取りづらい」などの声が寄せられているという。
短期入所に適用される介護報酬は、入院による診療報酬より低く、看護師や機材の確保の面でも負担が大きいため、病院などの参入が進まないとされる。
これらの事情を踏まえ、県は医療的ケアに必要な機器購入を支援する。また、医療的ケアを実施できるヘルパーを増やすため、介護事業所の研修会の開催費を助成したり、重症心身障害児・者への理解を深めてもらう勉強会を開いたりする。事業費は約1340万円。
同課は「身近に短期入所を利用してもらえるような態勢を構築したい」としている。
=2015/05/08付 西日本新聞朝刊=