日本年金機構が都道府県ごとに置いている事務センターの一部が、障害年金の支給審査で独自の調査用紙をつくり、兵庫では申請者に対し、同居家族の名前や就労状況など審査に関係ないはずの項目まで記入を求めていることが11日分かった。
兵庫は厳しい審査で知られ、家族の収入などを不支給の判断材料にしている可能性がある。年金機構内部からも「不適切だ」と疑問視する声が上がっており、機構本部は、兵庫をはじめ全国の事務センターの事務運営に関し実態を調べる方針。
独自の調査用紙の使用が判明したのは兵庫のほかに東京のセンター。多くの人が受け取る障害基礎年金では、不支給と判定される人の割合に都道府県間で最大6倍の差があり、各センターのこうした事務運営の不統一も一因とみられる。
調査用紙は2都県とも対象が精神・知的障害者で、通常の申請書類を受け付けた後、追加調査が必要な人に個別に送付。食事や掃除といった日常生活がどの程度できるか、勤務先や仕事の内容などの記入を求めている。
兵庫の用紙は「日常生活申立書」との名称で、同居人の「氏名」「職業」「就労や生活の詳細」の欄があるが、他県のセンター職員は「審査には関係ないはず」と指摘。別の元職員は「詳しく調べて年金額を増やすことはまずなく、結果的に支給停止や減額の判断材料になっていた」と話す。
年金機構の2012年度のデータによれば、精神・知的障害者に限ると、兵庫では障害年金の審査を受けた人の56%が不支給になっており、群を抜く高い割合で全国一。年金機構本部は東京の調査用紙は問題ないとみているが、兵庫については「詳しく調べて確認したい」としている。
【日本年金機構の体制】不祥事が相次ぎ廃止された社会保険庁の後継組織として2010年1月に発足した日本年金機構は、国からの委託で公的年金の保険料徴収や記録管理、給付実務などを担う公法人。組織の構造は、本部(東京)をトップに以下、ブロック本部(全国9カ所)、都道府県事務センター、年金事務所(全国312カ所)-となっている。事務センターは一部が集約化されており、全国で44カ所。障害基礎年金の場合、市区町村役場や年金事務所で申請を受け付け、書類が事務センターに送られ審査される。
日本年金機構の兵庫事務センターの調査用紙。同居人の名前や就労状況の記入まで求めている
2015/5/12 神戸新聞