福島市にある運動着メーカーのクラロン。ミシンや裁断機などが並ぶ工場では、服の製造工程ごとに担当者がてきぱきと仕事をこなしている。
同社は、社員135人のうち36人が心身障害者だ。作業の工程を細く分けて単純にすることで、全社員が適性に応じ仕事ができるよう工夫されている。
田中須美子会長は「60年前の創業時から、障害のある方々と一緒に仕事をしてきた。みんなしっかり仕事をしてくれる」と話す。
同社は障害者雇用の先駆けだ。障害者も社内教育で高度な技術を身に付け、大切な戦力となっている。全ての人が力を十分に発揮し、いきいきと働くことができるような労働環境の整備を進めていきたい。
改正障害者雇用促進法が4月から施行される。同法は障害者の自立と社会参加の実現を目的にしており、今回の改正では、採用や待遇面などで健常者と同じように処遇することを義務付けている。
車いす利用者のために机の高さを調整したり、出退勤時刻や休暇に関して通院・体調に配慮することなど、障害者が働きやすいよう職場環境の整備を求めているのも特徴だ。
国や労働関係機関は、企業向けのセミナーや関連資料の配布などを通して、企業に対して改正内容の周知徹底を呼び掛けていく必要がある。
働く障害者は増加している。昨年度、県内のハローワークで仕事を得た障害者の就職件数は、前年を130件上回り、1289件で過去最高だった。
しかし、県内企業の障害者雇用率(昨年6月1日現在)は1.84%にとどまり、全国平均の1.88%を下回っているのが現状だ。
国は、3年前から従業員50人以上の企業に対し、2.0%以上の割合で障害者を雇用するよう義務付けている。雇用率を上げるためには、障害者が持つ能力を事業に生かそうという発想が企業側にも求められる。
規模が小さい企業は雇用率が下がる傾向がある。職種が少なく、障害者が希望する仕事がないといった事情もあるだろう。作業環境の整備や改善は難しい企業もあるだろうが、事業主には障害者の就労意欲に応えるための知恵や工夫を望みたい。
障害者の雇用義務があるのは現在、身体障害者と知的障害者だけだが、2018年4月からは精神障害者も対象になる。それぞれの障害に対応した雇用の受け皿づくりを急ぎたい。
2016年02月14日 47NEWS