凶器になり得るとの偏見から一部の都道府県議会で傍聴席への持ち込みが禁じられてきた杖(つえ)が、今春にもすべての都道府県議会で持ち込み可能となる。全国都道府県議会議長会が先月、各議会のモデルとなる「標準傍聴規則」から杖の条項を削除したためで、杖の条項が残っていた県で規則改正作業が進んでいる。視覚障害者や高齢者にとっては杖は体の一部で、障害者団体などが要望しており、これが実った形だ。
議長会は今年1月22日の役員会で「杖」の記載を削除し、各議会へ通知した。議長会は改正理由を「高齢化社会に対応した傍聴環境の整備と、障害者差別解消法が4月から施行されるため」としている。
47都道府県のうち、杖の条項があったのは14道県。このうち、6県は通知を受け、規則の改正を進めており、鹿児島、千葉の両県議会は既に今月、議会運営委員会などで傍聴規則を改正し、富山県議会は2月議会(26日開会)から改正する予定。新潟、広島、大分の3県議会は今年4月、改正規則の施行を目指す。残る8道県では障害者らの杖を例外として規則に明記するなど、運用で認めていた。
衆参両院には杖の禁止条項があるが、運用で白杖の持ち込みを認めている。全国町村議会議長会も昨年5月、同様に改正したが、全国市議会議長会の規則には杖の記載はない。
日本盲人会連合の竹下義樹会長は「杖は体の一部であり、改正を歓迎する。更に障害者の社会参加を阻害するものがないか総点検したい」と話している。
毎日新聞 2016年2月24日