生活に苦しむ人の割合を示す相対的貧困率が障害者では25%を超え、4人に1人以上が貧困状態にあることが山田篤裕慶応大教授らの研究グループの調査で分かった。障害のない人の数値に比べほぼ2倍だった。
政府は全人口や18歳未満の子供を対象にした貧困率は計算しているが、研究グループによると、障害者に限った数値の算出は初めて。障害者が働ける場が少なく、賃金も安いほか、障害年金など公的な現金給付の水準が先進国の中で低いことが主な要因という。
厚生労働省の科学研究費による調査で、同省が貧困率の計算に使っている国民生活基礎調査(2013年実施)のデータを分析した。
「障害や身体機能の低下などで、手助けや見守りを必要としていますか」という調査票の質問に「必要」と答えた人を対象に、年代別に貧困率を計算した結果、20~39歳では28.8%、40~49歳は26.7%、50~64歳は27.5%だった。
障害のない人ではそれぞれの年代で13.8%、13.4%、14.6%と半分程度にとどまる。厚労省が公表している全人口(障害者を含む)の貧困率は16.1%。
研究グループによると、日本の障害者の貧困率は先進国の中で高い部類に入り、障害のない人との格差も大きい。山田教授は「日本の障害者の貧困が深刻であることが分かった。貧困からの脱出には就労が有効であることがうかがえ、本人や家族の就労を後押しする政策がもっと必要だ」としている。
▼相対的貧困率 全人口のうち、生活の苦しい人がどれだけいるかを示す指標。1人当たりの可処分所得を高い人から順に並べ、真ん中となる人の所得額(中央値)の半分に満たない人が全体に占める割合で表す。可処分所得は収入から税金や社会保険料などを除き、公的年金などを合計した金額。世帯の可処分所得と人数を基に計算する。資産は考慮しない。
2016/2/17 日本経済新聞