災害時に逃げ遅れやすい障害者が被害に遭うのを防ごうと、大阪市西区の一般社団法人が、障害者が利用する福祉施設の防災体制づくりをサポートする事業に乗り出した。東日本大震災で障害者の死亡率は被災者全体の約2倍だったとされる。障害者の防災の充実が急務としてノウハウの普及を目指している。
この診断は、ハードやソフト、障害特性への配慮など五つの領域で80〜100項目にわたって現状をチェックし、5段階で評価する。評価報告書が施設側に示されるのは後日だが、ふらっとでは利用者の災害時の宿泊を想定しておらず、水や寝袋などを備蓄していなかったことに気付かされた。ふらっとの支援員、市村恭子さん(36)は「防災意識が低かったと実感した。改善すべきことが明確になった」と話した。
施設側は評価報告書を受け取った後、障防協のアドバイスに基づいて災害時対応マニュアルを作る。最初のチェックの半年後に改めてチェックを受け、基準を満たせば障防協の「防災認定マーク」が与えられる。費用は98万円かかるが、国の助成金を活用するなどして負担軽減を図る。既に大阪や東京などの60以上の施設から申し込みがあったという。
障防協は、代表理事の福島有二さん(28)らが昨年10月に設立した。福島さんは精神障害のある兄(32)がおり、兄のような人でも就労できる場所を作ろうと、立命館大在学中に起業。障害者や家族がネットで福祉施設の詳細な情報を検索できるサービスの開発をする中で、防災が不十分な福祉施設が多い実態を知り、防災のサポートを事業化した。
障害者や高齢者ら「避難行動要支援者」の防災については、自治体が対象者の名簿を作ったり、福祉避難所を指定したりしているほかは、施設任せになっているのが現状。福島さんは「障害者が安心して命を預けられる安全な施設を一つでも多く増やしていきたい」と意欲を見せている。
毎日新聞 2016年2月21日