交流で理解深め 練習場など、すそ野拡大に課題
14日に閉幕した知的障害者の国内冬季競技会「スペシャルオリンピックス(SO)2016新潟」には選手、ボランティア、観客など延べ約1万5千人が参加した。3日間にわたって行われた競技やイベントを通しての交流は、障害に対する理解を深めるとともに共生社会を築く大きな一歩となった。一方、大会が残した財産を受け継ぎ、育てるための課題も浮き彫りとなった。障害者がスポーツを続けるための練習場所の確保や費用、参加数の拡大などの面で、さらなる環境整備が求められている。(報道部・五十嵐南美)
「なんだ。僕たちと変わらないんだ」。雪上競技の会場となった南魚沼市の五日町スキー場で、選手と触れ合った小学生の言葉を聞き、同市大会実行委員会事務局長の谷口博文さん(59)は笑顔になった。「相手に障害があっても構える必要はないと、子どもたちに体感してもらえた」と地元開催の意義を語る。
開幕直前まで広報活動に力を入れたことで、多くの子どもたちが会場に集まり、応援やボランティアに汗を流した。選手の滑りを見て息をのむ子、選手に手を振り返してもらい喜ぶ子の姿もあった。「価値観が固まる前に、こうした経験をすることが大切」と谷口さん。今後も小中学校で障害者への理解を深める出前授業などを行う予定だ。
主役の選手たちも大きな自信を得たようだ。アルペンスキーに出場し、金メダルを獲得した県立高田特別支援学校中学部1年の伊藤愛さん(12)は「表彰台に上がったら、たくさんの人が見えた。初めての金メダルは、すごくうれしい」と顔をほころばせた。
今大会は、選手以外の知的障害者が健常者とペアを組んでボランティアに当たる「mit(ミット)」という新方法が導入された。この方法で参加し、スケート会場でグッズ販売をした土田学さん(27)=新潟市北区=は「いつもは支援を受ける側だが、今回は自分ができる仕事があった」と喜んだ。
参加した関係者からは練習場所の確保や、参加者数の向上など今後の課題を挙げる声が聞かれた。フィギュアスケートのヘッドコーチを務めた渡辺匡(まさし)さん(47)=柏崎市=は「練習場所を借りる際の金銭面の負担は重かった。減免措置があるとありがたい」と訴える。
参加者のすそ野を広げる取り組みも必要だ。県障害福祉課によると、知的障害者に交付される療育手帳を持つ人は県内で約1万7500人。そのうちSOの練習会に参加しているのは約400人。大会に出場したのは約90人で、一握りでしかない。SO関係者は「この子には無理だろう」と周りが初めから諦めてしまうケースもあると指摘する。
大会を主催したSO日本のプログラム推進チームリーダー園部さやかさん(41)は「これまでの開催地を見ると、大会後に日常の練習を手伝うボランティアは増える傾向にある。それを維持できるかが重要」と話す。
初めての本県開催で盛り上がった人々の関心や選手のやる気を、どうやって持続させるのか-。
大会実行委事務局長の久保田健さん(51)は「大会が打ち上げ花火で終わらないよう、盛り上がりを次につなげたい」と力強く語った。
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