巡回指導 11・12日、福山で盲学校大会 /広島
視力の有無にかかわらず囲碁を楽しめる環境を作りたいと、全盲のアマチュア四段で日本視覚障害者囲碁協会代表理事の柿島光晴さん(39)=東京都町田市=らが各地の盲学校を巡回指導し、石の白黒や碁盤を触って区別できる視覚障害者向け囲碁セットの普及を図っている。11、12日には、福山市鞆町鞆の銀河学院研修センターで「第1回関西・中国・四国盲学校囲碁大会」を開催。「実戦の機会を増やし、いつか視覚障害者のプロ棋士を」と夢見る。
柿島さんは20歳で網膜色素変性症を発症し、数年後に失明した。その頃テレビから聞こえてきた人気アニメ「ヒカルの碁」(2001~03年放送)の音声で興味を覚え、碁会所に通って約12年間でアマ四段になった。
視覚障害者対象のカルチャースクールなどで囲碁を教えるようになったが、数年前までは専用の碁盤の数が少なく、生産用の金型はさびついていた。12年にそんな苦境が毎日新聞で報じられ、福岡県内の業者の協力で13年に金型を作り直し、アイゴとして市販が始まった。「囲碁を通して広い世界に触れてほしい」との思いから、柿島さんは巡回指導や大会開催の準備に力を入れる。
西日本初となる盲学校囲碁大会は、柿島さんと共にアイゴの普及に取り組む神奈川県平塚市のNPO法人「暮らしと耐震協議会」(木谷正道理事長)が主催。近畿、中国、四国地方にある公立盲学校全17校の生徒が対象で、柿島さんらはアイゴ寄贈や囲碁指導のため各盲学校を巡回しながら参加を呼びかけている。5月には岩手県大船渡市で全国大会も企画。「僕自身、囲碁を通じて多くの人に出会えて人生が豊かになった。若い人にも同じ体験をしてほしい。大会が視覚障害者囲碁の普及のきっかけになれば」
また、柿島さんは12日、鞆の浦歴史民俗資料館(福山市鞆町後地)前庭で韓国の全盲アマ棋士、宋重澤さんと対局する。同時開催される日韓交流イベント「21世紀の朝鮮通信使・鞆」の一環。「視覚障害者でも質の高い碁が打てることを多くの人に見せたい」と意気込んでいる。
アイゴに関する問い合わせは日本点字図書館用具事業課(03・3209・0751)、大会については木谷さん(080・7991・4761)。
生徒と9路盤のアイゴで対局する柿島光晴さん
視覚障害者が対局を楽しめるよう工夫された「アイゴ」。碁石は突起で白黒が区別でき、盤に石を固定できる=奈良県大和郡山市の奈良県立盲学校で、
毎日新聞 2017年3月2日