阿南市は、色覚障害者用の津波防災マップを300セット作った。3月末までに市役所や支所、公民館17カ所に置き、自由に持ち帰ってもらう。
マップは縦約55センチ、横約75センチで、2014年3月に市のホームページで公開したものと同じ内容。マグニチュード9・1の南海トラフ巨大地震が発生した際、津波の浸水が予想される富岡、見能林、橘など市内10地区が対象となっている。
津波の高さを▽0・01~0・3メートル▽0・3~1メートル▽1~3メートル▽3~5メートル▽5メートル以上-の5段階で示し、各区域を黄色の濃淡で区別した。国土交通省が16年4月に公表した「水害ハザードマップ作成の手引き」で、色覚障害者向けに推奨した色を採用した。
市防災対策課は「いざという時に色覚障害者も迅速に避難できるよう、マップを活用してもらいたい」としている。
聴覚障害者で、聴導犬と暮らす安藤美紀さん(47)=東大阪市=が今月から、障害者とのコミュニケーション方法を学ぶセミナーで講師を務めている。安藤さんは宝塚市で毎年、毎日新聞や市などが開く補助犬シンポジウムでパネリストとして参加し、障害者の社会参加について発言してきた。今回のセミナーは2020年の東京パラリンピックを控え、障害のある人への対応や必要な配慮について、障害者側から発信する試みで、参加者にも好評だ。【釣田祐喜】
04年、障害児向けに学習支援やパソコン教室を開いたりするグループ「MAMIE(マミー)」(大阪市)を設立。後にNPO法人となり、理事長に就任した。その傍ら、自作のイラストによる「パラパラ漫画」を動画サイト「ユーチューブ」に公開したり、小中学生らに講演したりして聴覚障害や聴導犬のPRに力を入れてきた。
安藤さんが講師を務めるセミナーは、日本財団(東京都)の「パラリンピックサポートセンター(パラサポ)」が主催する「あすチャレ!Academy(アカデミー)」。障害のある選手や旅行者らが多数、訪日すると見込まれるパラリンピックに向け、視覚や聴覚、肢体不自由などさまざまな障害のある人を講師に招き、理解を広げようとする取り組み。安藤さんも依頼を受けた。
今月7日、初のセミナーに臨んだ。集まったのは会社員や大学生など14人。安藤さんは、障害者と会話したり、手助けをしたことがなかったりする人は、理由として「何をすればよいか分からないから」という人が目立つという内閣府の調査を紹介した。さらに、安藤さんが客として入った店で、耳が不自由だと分かると、店の人が話しかけてくるのをやめて、連れの友人や家族としか話さなくなった経験を語った。安藤さんは「『手話ができないから』とか『聴覚障害者と会話した経験がないから』と考え、尻込みするのかもしれない。だが、身ぶり手ぶりを交えたり、筆談やスマートホンに文字を入力したりしてもいいから、障害者に向き合ってほしい」と訴えた。
この日は、視覚障害者を目的地に案内する時や、車椅子を利用する人が飲食店に入店した時に、どう配慮すればいいかなど、さまざまな場面を想定し、対応する方法を参加者が互いに話し合った。受講した大阪市淀川区の女性会社員(32)は「今まで障害のある人の接し方が分からなかったが、私にもできそうなことがあると分かった。街で見かけたら積極的に声をかけたい」と話した。
4月にも大阪府内でセミナー開催を予定する。安藤さんは「心の中にある壁が少しずつでもなくなればうれしい。セミナーは可能な限り開催したい」と意気込む。講師は現在、安藤さんを含めて10人ほどだが、今後は100人程度まで増員を目指し、受講者も延べ10万人を目標とする。
セミナーの問い合わせはサポートセンター(06・6195・4466)。
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障害者、健常者 共に活動 大西正広さん(73)
「やってもらう、やってあげるの関係を超えて、一緒に何かをしたい」。ユニーズ京都代表、大西正広さん(73)はそう考え、視覚障害者と健常者とが一緒に活動する前身のボランティアグループ「京都盲人福祉研究会」を1970年に設立した。一般向け点字教室や、健常者と共にハイキングなどを楽しむイベントを企画。一方、80年ごろからは外食店への点訳メニューの配備にも力を注いだ。
大西さんは「店の負担もわかるし、同伴者がいれば、メニューを音読説明して事足りることもある。一人でも気軽に立ち寄れるようにという理念と現実のギャップは大きかった」と振り返る。
2004年に団体名を「ユニーズ京都」に改称。08年には京都観光に来た視覚障害者へのアイヘルパー事業「おこしやす京都」を始めた。
重要なのはヘルパーが「目の提供以上のことはしない」という点だ。「ここへ行こう」と案内するのではなく、視覚障害者が行きたいところに、好きなように同行する。「ただ付き添うのではなく、山の色、道の看板、寺社の情景など、ヘルパーの目に入った情報を伝え、双方に取って良い思い出になるよう、観光を楽しんでほしい」と大西さん。
13年からは、二人乗り自転車を使った視覚障害者の公道サイクリングの実現にも力を注ぐ。「障害を理由にできることまで制限されたくない。そして、多くの人とさまざまなことを楽しみたい。今年は木津川のコースを走りたいね」と、笑顔で意欲を燃やす。
3月末までアイヘルパー養成講座の受講生を募集中。詳細・申し込みはユニーズ京都(075・722・6484)。
毎日新聞 2017年3月15日
現在、全国の重症心身障害児は推計4万人余りと、50年前の約2・5倍に増えています。入所者のうち「大島の分類1〜4」に該当する「狭義の重症児者」は、1万5000人程度です。したがって、入所の約2倍近い、少なくとも2万6000人が在宅で暮らしていることになります。
実は、公法人立の重症児施設は、在宅の重症児者支援に1970年代前半から、一貫して努力してきました。
社会福祉法人旭川荘が運営する重症児施設「旭川児童院」では、71年に「心身障害児(者)巡回療育相談事業」を全国に先駆けて始めました。児童相談所のケースワーカーと共に、旭川児童院の医師や保育士などが一軒一軒、自宅を訪問し、在宅で暮らすための助言を行うものです。
77年から「緊急一時保護入院」(のちの短期入所)を、89年から「重症児通園モデル事業」を全国5カ所の一つとして手がけており、のちに制度化されました。
このうち「短期入所」は、全国的に見て大幅に利用が増え、公法人立だけでも年間12万日を超えています。
しかし、短期入所専用ベッドの不足と、特に呼吸管理などが必要な「超重症児」「準超重症児」といわれる一群の子や緊急入所への対応面での困難が、新たに顕在化しています。
旭川児童院を例に挙げると、年1500件、延べ4000日に上ります。日々の入退所は急性病院に似ています。岡山県では一般病院や老人保健施設が医療型短期入所事業所の指定を受けており、より身近なところでの短期入所の利用が拡大されているのです。
しかし、「超重症児」「準超重症児」と言われる人の受け入れは、ほかの機関では難しく、重症児施設の役割ではないかと思います。短期入所利用の理由では近年、母親の仕事のための利用が多くなっています。
短期入所は元々、家族の都合を優先し、本人も病状が安定した状態を前提条件にしてきましたが、現実はそうでありません。
医療ニードが顕著なケースや、病状が急変し各種の医療処置などが必要な場面が、日常茶飯事になりました。
ところが、本来の短期入所ではそんな事態を予想していなかったため、診療報酬面での制約があり、受け入れれば受け入れるほど、赤字を余儀なくされる問題が起きています。2016年の診療報酬の改定で、一定の医療処置等について、診療報酬が算定されることとなりましたが、十分ではありません。
このほか旭川荘では、従来の重症児者のための入所と外来に加え、13床に上る「Post NICU」や在宅ケアの訓練をする親子病床、在宅者のための入院病床、そして「医療対応の短期入所」などを進めています。
「Post NICU」についても課題に直面しています。それは1日1人10万円に上る「NICU」の診療報酬に比べて、半分以下であるということです。このため、経済的理由から、人的対応の整備が難しいのです。
近年は知的障害者施設からの入所も増えつつあります。障害者の高齢化が進む中、医療ニードが高いケースの受け皿としての役割は、今後大きくなるはずです。
呼吸器を装着する重症児もいる
末光茂・社会福祉法人旭川荘理事長
【略歴】1942年生まれ。岡山大学医学部卒業。全国重症心身障害日中活動支援協議会長、日本重症心身障害福祉協会参与、全国重症心身障害児(者)を守る会理事、日本発達障害学会理事なども務める。
2017年03月15日 福祉新聞編集部
東日本大震災を教訓に高齢者や障害者ら要配慮者の避難について見直しが進む中、札幌市中央区の南円山緑ケ丘町内会(矢萩弘志会長・480世帯)は、町内に住む要配慮者の緊急時受け入れ協定を地元の社会福祉4施設と結んだ。住民自らが災害弱者の避難先を確保する動きは珍しく、矢萩会長は「行政任せにせず、地域でも準備をすることが大切だ」と強調する。
町内会は昨年12月、有料老人ホーム2カ所と特別養護老人ホーム、グループホーム各1カ所と協定を締結した。協定では、地域の避難所となる小学校体育館では生活が困難な高齢者や障害者、妊婦らに、施設側は町内会の要請に応じて可能な範囲で滞在場所を確保し、移動の車両を提供。食事提供、介助支援などを最大1週間実施する。かかった費用は後日、利用者か家族が施設に支払う。
矢萩会長は「日ごろから行事などで関わりがあったからスムーズに話が進んだ」とした。協定を結んだ施設の一つ「特養ホームたんぽぽの丘」の柴田邦彦施設長は「助け合うのは当たり前。大変な時こそ相互協力で乗り切りたい」と話す。
検討のきっかけは東日本大震災だった。さらに地域内の急斜面が土砂災害警戒区域に指定されているにもかかわらず、2014年9月の大雨で避難勧告が出ても体育館に町内会の住民が1人も来なかった。危機感を覚えた矢萩会長は「弱い立場の人の身を守るため、地域として何ができるか」と考えたという。
一方で、職員が足りない時や夜間の対応など課題も多い。今後は共同訓練を計画し、協定も1年をめどに見直す方針だ。
市保健福祉局は町内会の取り組みを「住民自らが高い意識を持ち、地域の防災力を高めることは重要だ」と評価する。
市、事前周知はなし
2013年に災害対策基本法が改正され、自治体は高齢者や障害者、乳幼児など要配慮者を受け入れる福祉避難所の指定が義務づけられた。
札幌市は老人福祉施設や旅館業界団体と協定を結び、福祉避難所として最大313施設約1900人分を確保。ただ「被災状況に応じて場所が変わる」として事前周知はしておらず、開設や避難者の割り振りに数日かかることも予想される。