21日の「世界ダウン症の日」にあわせ、障害のある子や若者に算数を教えてきた「遠山真学塾」(武蔵野市)の講師陣が、ゆっくり学ぶ子どもたちの「学び」を考える学習会を開く。相模原市の障害者施設で19人が殺害された事件を受け止め、ともに考える機会をつくろうと企画した。
JR武蔵境駅近くのビルの一室。生徒と講師が、すごろくやカードなど独自の教材を手に向かい合う。特別支援学級に通う子、学校になじめず登校していない子……。ダウン症や自閉症の生徒も多く通うが、主宰する小笠毅さん(76)は「どんな障害があるのかはあえて聞かない」という。
出版社に勤めていた小笠さんは、数学者の遠山啓さん(故人)の本の出版に携わったのをきっかけに、障害のある子どもに自宅で算数を教えていた遠山さんの遺志を継ぐかたちで、1983年に塾を開設した。
現在、小学生から30代までの100人ほどが通う。「算数は苦手」と思い込み、周囲にも「買い物ができれば十分」と思われてきた子が、理解できた時に目をキラキラさせる。「学びたいという意欲でいっぱいなんです」と小笠さん。
昨年7月、相模原市で起きた事件は塾に衝撃を与えた。ある生徒は「自分は生きていてはいけないのかな」とつぶやいたという。「外出中、独り言を言う我が子を制止してしまう」と話す保護者もいた。講師たちは「向き合えば、障害の名称ではなく、個性が見えてくる。どの子にも、それぞれの成長があることを伝えなければ」と考えた。
学習会は計3回。21日は「子どもを『算数大好き!』にする第一歩」として勉強が苦手な子への教え方を考える。31日は「障害のある子どもが学ぶ権利」、4月2日は「かけ算を楽しく教え学ぶ」がテーマ。いずれも午前10時から武蔵境駅近くの「武蔵野プレイス」で。参加費は各500円。申し込みは電話(0422・54・4709)へ。
遠山真学塾では、講師と生徒が向かい合い、サイコロやカードなどを使って遊びながら学ぶ
2017年3月18日 朝日新聞