障害者と健常者の共生を目指す障害者差別解消法の施行から、4月で1年。日本情報処理検定協会(日検、名古屋市)主催の検定を受けた岐阜県内の弱視の高校生が、受験時にタブレット端末の使用が認められ、合格証書を手にした。学校の教員が同端末の使用を掛け合った結果で、専門家は「(同法にある)合理的配慮の好例。検定でこうした配慮は珍しい」と評価している。
今月、情報処理技能検定の表計算準2級に合格したのは、岐阜盲学校高等部2年の渡邉道治さん(17)。先天的に目の中心部の視力がなく、周辺部は0・01~0・03ほどという。
日検では障害のある受験者に、制限時間の延長や問題文の点字翻訳などを認めていたが、渡邉さんの場合、問題文が紙に書いてあると、途中で行を読み飛ばしたり、読んでいた箇所を見失ったりすることがあり、受験は難しかった。
「日検の検定を受けたい」。中学部2年のときに、同校の春見(かすみ)明子教諭(44)に漏らした一言がきっかけだった。小学生の頃からパソコンが好きで、情報処理の技能を試す検定に興味があった。
能力が最大限発揮できる方法はないか。春見教諭が思い至ったのは、タブレット端末。画面上で文字を拡大し1字ずつ確実に読むことができる。合理的配慮についても知り、2015年に日検に端末を使って受験できないかと掛け合った。
日検担当者も「これまで希望する受験者がいなかった。できるだけ協力したい」と関心を示し、電子化に向けた環境整備を進め、タブレット端末を使った受験へとつながった。春見教諭は「電子機器は容易に弱視の人と健常者の溝を埋める。他の検定試験にも波及してほしい」と願う。
春見教諭に協力した東京大先端科学技術研究センターの近藤武夫准教授は「大学入試で問題を読み上げる介助者の同席が認められるなど、検定試験の現場も変わりつつある。情報通信技術(ICT)への対応は今後必須になる」と話す。
検定合格が自信になり、渡邉さんは工業系の大学進学を目指している。将来の夢はプログラマー。「視覚障害者を助けるアプリやソフトをつくりたい」と描く。
弱視のため、タブレット端末を使って情報処理技能検定を受けた渡邉道治さん。春見明子教諭が実施団体に掛け合い、実現した
岐阜新聞