農業の担い手不足解消と障害者雇用促進を図る「農福連携」で、浜松市を拠点に農業を請け負う特例子会社「ひなり」が注目を集めている。
障害者の法定雇用率は2018年4月に増率改定される見通しで、障害者の職域開拓は企業経営者にとって重要課題。同社の取り組みは通年で農作業ができる県西部の地の利を生かした農福連携で、県内外から関係者の視察が相次ぐ。
ひなりはIT系の伊藤忠テクノソリューションズが親会社で、10年4月に都内に設立され、浜松オフィス(南区飯田町)も同時開設された。同オフィスでは20~40代の知的・精神障害者20人を雇用し、野菜の定植や収穫、出荷調整などの業務を請け負っている。
南部信之社長は「誰でも分かるように農作業を体系化し、働き手が確保されることによって、農家の経営規模拡大が可能。障害者の雇用増にもつながる」と相乗効果を見込む。
これまで、特例子会社は清掃業務などが中心だったこともあり、雇用率改定を見据えた全国の企業担当者の訪問を受けるようになった。南部社長は「蓄積した障害者の作業手順や安全管理などのノウハウは公開する。仲間を増やして業界を盛り上げたい」と話す。
ひなりは浜松市や磐田市など県西部の8農家と提携している。浜松市では独自に障害者を雇用する農家もある。同市では05年度に発足した市ユニバーサル農業研究会を中心に、農家と福祉関係者らの情報交換が進む。3月上旬に市内で開催した農福連携のシンポジウムには、農業委託の特例子会社を検討する企業の担当者の参加も目立った。
市農業水産課の担当者は「まずは農家の理解が不可欠。障害者自身も屋外で土に触れることで心の安定につながる」と県内外への広がりを期待する。
<メモ>障害者雇用率制度と特例子会社 障害者雇用促進法に基づき、従業員50人以上の事業主に対し、従業員に占める知的・身体障害者の割合が一定率以上になるよう義務付けている。現在2・0%の法定雇用率は2018年4月に引き上げられる予定。
特例子会社は事業主が障害者の雇用に特別の配慮をして設立した子会社。一定の条件を満たせば、特例としてその子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されていると見なして、雇用率を算定できる。
障害者の農作業を見守るひなりの南部信之社長(左)
2017/3/19 @S[アットエス] by 静岡新聞