四肢まひのため障害者施設「神戸愛生園」(神戸市須磨区友が丘1)で暮らす古舞(ふるまい)理恵さん(51)が、協力者の聞き書きによって7年間したためたエッセーを本にまとめ、自費出版した。言葉を聞き取ってもらうことは「苦手」で「しんどい」と言うが、それでも「伝えたい」と、38編を紡いだ。(金 慶順)
古舞さんは脳性まひにより四肢が不自由で、高校時代から同園で生活する。2010年、障害者の社会参加を支援するNPO法人「ほっとぽっと」(長田区庄山町2)の森岡千代代表(67)が同園を訪れて2人は出会い、意気投合した。
時間をかけながらも好きなこと、悲しかった思い出などを話す古舞さんの姿に「もっと伝えたいことがあるはず」と森岡さんは感じ、月1回、寄稿を依頼した。1編は数百字程度だが、森岡さんが聞き取り、ニュアンスを確認しながら文字に起こす作業は1~2時間に及ぶという。
エッセーでは「わたしの春はなつかしい人を思い出すきせつです」と施設を去った職員や亡くなった祖父を思い、姉の結婚式に出られなかった日を「私がいない方がいいのかなと、くやしかった」と振り返る。このほど須磨区役所で開かれた、ほっとぽっとの朗読発表会にも出演し、「おとうさん」と題した1編を朗読。「お父さんみたいな人が理想のカレです」と読み上げた。
発表会の前、「どうして本を作ろうと思ったの?」と森岡さんが尋ねると、古舞さんは目を閉じて力を込め、言葉を絞り出した。
「いろ、んな」「ひとに、よんで」「わたし、いき、いるって、しって」。途切れ途切れの言葉を、森岡さんはじっと耳を澄まして拾う。「いろんな人に読んでもらって、私は生きているって知ってほしい?」。確認すると、古舞さんは笑顔でうなずいた。
エッセー集「りすさんの ちょっときいて」(93ページ)は640円で500部を印刷。ほっとぽっとTEL078・766・1356

古舞理恵さん(左)の言葉を森岡千代さん(右)が聞き取って文字にし、エッセー集を完成させた
2017/3/26 神戸新聞NEXT