事業所の団体代表「工賃が安定」と評価
課題は一般企業への就職
障害者が訓練を兼ねて働く「福祉的就労」の対象施設が四月から富山県内で緩和され、お年寄りから障害者まで多様な人が一緒に過ごす「富山型デイサービス」に障害者十五人が就労した。国による企業の障害者法定雇用率も引き上げられ、就労先の拡充が期待されるが、重度障害者への就労支援など課題も浮かび上がる。
国からの支援を受けられる福祉的就労はこれまで、事業所ごとに障害者を指導する担当者を置くことや、障害者二十人以上の利用が条件だったため、規模が小さい富山型デイは対象外だった。だが富山県が国から「とやま地域共生型福祉推進特区」に認定されたことで、四月からは県内複数の富山型デイに計二十人以上働いていれば、福祉的就労に見なされるようになった。
富山型デイで富山市富岡町の「このゆびとーまれ」では、障害者四人が就労。洗濯物を干したり、高齢者の介護の手伝いや配膳をしたりして働いている。
このゆびとーまれ内にあり、富山型デイ十カ所をまとめる事務所「はたらくわ」では、各事業所を巡回して指導する担当者を四人配置。その一人の山口賢一さん(47)は「巡回により、自分のことを気にしてくれる人がいるんだと、働く励みになっているとの声も聞かれる」と効果を話す。
富山型デイの事業所でつくる「富山ケアネットワーク」によると、富山型デイで働く障害者は四月から県内九十四事業所のうち十事業所に就労。月額工賃は平均四万三千円で、県内障害者の一万三千円と比べて高い。
ネットワーク代表の惣万佳代子さん(61)は「これまでは事業所のトップの考え方次第で給料がいきなり変わったり、リストラされたりした。管理が事務所に一元化され、適正な人事ができるほか、安定した工賃を手渡せる」と評価する。
障害者の就労は、国が四月から企業の従業員に占める障害者の法定雇用率を引き上げ、民間企業では1・8%から2・0%になった。富山労働局によると、二〇一二年度にハローワークを通じて就職した障害者は九百九十八人で一一年度と比べ18%増。一方で、担当者は「精神障害者や軽度の障害者の方が就職しやすく、重度な障害者の就労が課題」と指摘する。
一般企業への就職に課題を挙げる富山型デイの職員もいる。五月末に開かれた富山型デイと特別支援学校との合同会議で、職員の女性は「富山型デイで障害者を受け入れるようになった背景には、企業や世の中で障害者が受け入れられていないからではないか」と訴えた。
就労者は富山型デイサービスで洗濯物を干すなどしている=富山市富岡町で
中日新聞-2013/06/25