年末…。ここは“ほっこりした話”で締めくくりたい。
先日、一部で報道された阪神・鳥谷敬の善行だ。フィリピン・セブ島の子供たちに2千足の靴を贈ったという。きっかけは昨年12月に野球教室で現地を訪れたとき、素足で走る子供たちを見たこと。ふびんな姿に、自らが幸せであることを知った。すぐさまの行動が何ともすてきである。
とかく自分さえよければ…の時代だが、日本球界には人知れず社会貢献する選手が数多くいる。そんなプロ野球人の活動を表彰する賞に、『ゴールデンスピリット賞』がある。今年はロッテからFAで楽天に移籍した今江敏晃が選ばれた。
理由は、2006年から始めた群馬の障害者野球チームとの交流、千葉の児童養護施設訪問、東日本大震災の復興支援など、さまざまな活動であった。
『今江主義』という本人の公式サイトにはこう記されている。抜粋すると…。
「一流のプレーを通じてファンや子供たちに夢や希望を与えることが、プロ野球選手の最も大きな使命。でも、実は僕も皆さんから色んなチカラをもらって、毎日、野球に励んでいます。だからこそ、僕はその恩返しをしたいと思います」
そのいかつい顔から“ゴリ”の愛称を持つが、心は優しく責任感が強い。06年、第1回ワールド・ベースボール・クラシックの際、予選ラウンドの韓国戦、自らの失態で敗れると日の丸を背負った責任感に「このままだと、生きて日本に帰れない」と吐露した男である。
過去、いじめ防止活動に熱心だった松井秀喜さん(元大リーグ・ヤンキース)、盗塁の数だけ車いすを寄付した赤星憲広さん(元阪神)らが受賞しているが、皆さん、人として、かがみのような存在なのである。
さらに…。巨人・内海哲也投手は08年から養護施設などで暮らす子供たちへランドセルを届け続け、今年でその数は千個を超えた。自ら「I型糖尿病」を抱える阪神・岩田稔投手はハンディを抱える人々と交流を持ち、病気の研究啓蒙(けいもう)活動も欠かさない。とにかく、挙げればきりがない。
“元祖”は王貞治さん(現ソフトバンク球団会長)。50年以上前、巨人に入団した直後から札幌にある養護施設を訪ね続けたことは有名である。そんな“王イズム”が、いまなお球界に脈々と生きている。
一部、野球賭博に入れあげたばか者がいたが、お金の使い方って、こういうものでしょう。
2015.12.30 産経ニュース