横須賀うわまち病院心臓血管外科

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MICS:小開胸心臓手術の適応と禁忌

2018-03-14 15:30:22 | 医療
MICS:小開胸の心臓手術は創が小さい、胸骨を切らないことから、縦隔炎の発生がなく、ドレーンの排液も少ない。早期の回復が期待できる術式といえます。実際、横須賀市立うわまち病院心臓血管外科で経験した小開胸の心臓手術の患者さん達は、みな通常よりも回復が速いため、早期に退院していきます。通常、術後約2週間で退院する冠動脈バイパス術や弁膜症手術の患者さん達も、約1週間で退院しています。

MICSによい適応の患者さんとしては
 僧帽弁形成のみの手術、など手術手技がシンプル
 上行大動脈の性状が良好で、4cm以下 ⇒ 大動脈遮断が安全に行える
 大腿動脈送血が安全に行える、大腿動脈の太さが十分あり、腹部~胸部大動脈の性状が良好
 残存心機能(左室機能)が良好
 体厚がある程度ある(椎体~胸骨間距離)が十分ある
 肺の癒着がない
 片肺換気が可能(肺機能が良好)
などで、やはり比較的若くて元気な人向けともいえます。

一方、MICSの禁忌もしくは望ましくない患者さんとしては、その逆で
 手術手技が広範囲にわたり、複雑
 上行大動脈の拡大
 大腿動脈が細い、大腿~腸骨~腹部~胸部下行大動脈の性状が不良
 心機能が悪い(左室駆出率<40%)
 体厚が薄い、胸郭が小さい
 肺が癒着が著しい
 片肺換気不能

などで、より安全確実な方法と考えた場合、特に高齢者では従来の胸骨正中切開を選択する場合が多いです。
 
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