横須賀うわまち病院心臓血管外科

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虚血性心筋症による僧帽弁逆流

2018-03-31 11:58:51 | 心臓病の治療
 虚血性心筋症 = 冠動脈の狭窄により心筋梗塞を繰り返す、もしくは広範囲の心筋梗塞を起こす、慢性的な心筋の虚血が持続する ことなどにより、心筋が動かなくなり、心不全を呈する状態。
 冠動脈のカテーテル治療やバイパス術により心筋の虚血が解除されれば心筋収縮力が回復する可能性がありますが、すでに虚血が解除されているにもかかわらず、心筋の収縮が悪い状態では、治療に難渋することが多いです。

 虚血性心筋症では左室が拡大することにより、僧帽弁の前尖と後尖の接合がうまくできなくなり、僧帽弁逆流が発生し心不全をさらに悪化させます。これを虚血性の僧帽弁閉鎖不全症ともいいます。虚血性の僧帽弁閉鎖不全症は、体内の体液の状態や心筋収縮の状態などによって逆流量が変化するので、機能性の僧帽弁閉鎖不全症とも言います。
 利尿剤や強心剤の投与などで、体液量の減少や心筋収縮力の増強された状態では僧帽弁逆流は軽減しますし、体調の悪化、感染、塩分や水分の過剰摂取などをきっかけに、悪化することもあります。
 左室の拡大によって僧帽弁逆流が出現するメカニズムは僧帽弁輪の拡大と、左室の拡大に伴って腱索ごと僧帽弁の前尖、後尖が左室の中に引っ張られて落ち込むことによって接合が悪くなる、いわゆるテザリング(Tethering)によっておこります。

 このメカニズムに合わせた外科治療を心臓外科医は考える必要があります。
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