横須賀うわまち病院心臓血管外科

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感染性心内膜炎の病態・診断・治療②

2018-03-17 12:57:45 | 心臓病の治療
発熱が持続し、血液培養で細菌が同定される、いわゆる「敗血症」の場合は、感染源の特定が重要です。

中でも心臓超音波検査での感染性心内膜炎の否定は必須になります。発熱の原因が特定できないときの原因検索でも心エコーは必要な検査です。
臨床的に感染性心内膜炎で影響される心臓内の構造は、日本国内では大動脈弁と僧帽弁、もしくはその両方です。それによる弁の逆流が問題になります。海外では、不衛生な麻薬の静脈注射に起因する右心系の感染が多く報告されており、特に三尖弁への感染が多いと言われています。
体表からの心エコーで感染性心内膜炎による細菌塊が同定されなくとも、径食道エコーで細かく観察すると感染所見が発覚する場合もあります。特に径食道エコーは心臓の構造の細部にわたる観察が可能なため、感染の範囲、特に感染が弁尖だけに限局しているか、もしくは弁輪部にまで達しているかの評価に有用です。また、弁輪部に達しているかどうかで、手術の際の方法に大きく差が出たり、その後の再発の可能性にも影響します。また、人工弁をもともと装着している患者さんに感染を起こした場合(人工弁感染)、体表エコーでは十分が観察ができないため、この場合も径食道エコーは有力な武器になります。人工血管置換後の人工血管感染の診断にも有効な場合があります。実際に手術で臓器を開けてみて初めて状態が分かることも少なくありません。

また超音波検査は繰り返し経時的な観察が可能なので、毎日検査することにより、弁の破壊の進展が進んだりを観察できるため、適切な手術の時期を判断するうえでも重要な診断ツールです。また、毎日聴診器で聴診していると雑音の性状や大きさが変わってくるのも同様に重要と言われています。

超音波所見で可動性の細菌の塊を認めた場合は、はがれすく、塞栓症のリスクがあります。また、その細菌塊の大きさが直径1cmを越えるものは特に塞栓症を起こしやすいと言われ、早期の手術の対象になります。
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