横須賀総合医療センター心臓血管外科

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弓部大動脈置換術におけるShaggy Aorta Syndromeに対するBrain Isolation Technique

2020-01-20 23:22:34 | 大動脈疾患
 弓部大動脈瘤のにおいて粥状硬化の著しい症例=Shaggy aortaでは、特に脳梗塞のリスクが高くなります。これは大動脈の操作において大動脈壁からはがれた可動性の粥腫が脳に塞栓を起こすためで、人工心肺を回して大動脈内の血流パターンが変わった瞬間に起こる可能性や性状の悪い頸部分枝にカニューレを挿入する操作などでも起こります。
 これを可能な限り回避する方法の一つがBrain Isolation Techniqueです。これは、大動脈を介して弓部分枝に人工心肺中に血流がいかないようにする方法で、具体的には両側腋窩動脈から送血し、同時に左総頚動脈は人工心肺開始と同時に遮断して、遮断部位の遠位側を切開してこの切開孔から選択的脳還流を行う方法です。この方法では脳還流するための操作を、より性状の良好な部位を操作することも予防に繋がっています。両側腋窩動脈を露出して人工血管を縫着するなど手技や回路が複雑になり、手術時間もシンプルな弓部置換に比較して2時間近く長くかかりますが、より安全な方法を選択することが結果的に早く終わり早期に退院することにもつながります。

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