グッドぐんま 2

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アユの苦難

2010年06月19日 21時36分16秒 | 
水生生物が生活史の特定の時期にある生息域から別の場所へ移動し、その後再びもとの生息域に戻ってくることを「回遊」と言います。また、サケやアユ、ウナギのように、川と海を行き来する回遊のことを、特に「通し回遊」と呼んでいます。
さらに通し回遊は、遡河回遊、降河回遊、両側回遊に分けられます。
・遡河回遊:海で成育、川で産卵  サケ、ワカサギなど
・降河回遊:川で成育、海で産卵  ウナギ、アユカケなど
・両側回遊:川で産卵、いったん海に降りるが、主な成育場所は川 アユ、小卵型カジカなど

先日、娘に「どうして、海と川を行き来する魚がいるの? その場所にずっといればイイじゃない?」と訊かれました。う~ん、いい質問です。
通し回遊は、生活史の各段階で一番適した場所を選択した進化の結果です。例えばアユは餌となる動物プランクトンが豊富で冬でも川よりも暖かい海で仔魚期を過ごし、稚魚期以降は河川の中流域に移動し、珪藻などの付着藻類を餌にします。付着藻類を主な餌とする魚種はアユ以外にはほとんどいませんので、豊富な餌を確保することできます。

通し回遊は本来、合理的で効率的な生活の仕方だったのですが、近代以降は少々困った事態が起きています。
堰堤などの河川を横断する構造物による移動阻害です。

今年は利根川を遡上するアユの数が多く、群馬県内の利根川支流にもたくさんの天然アユが遡っています。

群馬県西部を流れるこの川にも天然アユが遡上しています。


しかし、河川を横断する堰堤がアユの遡上を阻んでいます。


この堰堤には魚道も付いていますが、川幅に比べれば狭い魚道に、遡ってきたすべてのアユを誘導することは困難です。多くのアユが堰堤下の水叩きの部分に入り込んでしまい右往左往。
そこに、カワウやダイサギ、アオサギなどがやって来て、アユ食べ放題。



動きの素速いアユもプールのような場所では、カワウやサギに簡単に捕まってしまいます。

堰堤を越えようと盛んにジャンプするアユと、アユを捕食するアオサギ


水叩きに入り込んでしまったアユのほとんどは堰堤を越すことができませんが、中には気合いで乗り越えていく、ど根性アユもいます


取水のための堰堤は人の生活によって必要なものですが、そこで生活している生き物にも最大限の配慮が必要ですよね。


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